つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

大国主義振りかざす品のない国

 先週の話で恐縮ですが、小生が共同代表理事をしている一般社団法人主催の講演会に、マイケル・マハラック米元ベトナム大使を招きました。彼は、もともと米国務省の役人ですが、今はシンガポールをベースに軍事関係のビジネスをしています。したがって、ASEAN諸国の内情、南シナ海の問題にも詳しく、彼の実体験、彼なりの分析を含めて興味ある話をしてくれました。
 マハラック氏によれば、今、ASEAN諸国は中国とかなり大きなウェートを占めた経済関係があることから、フィリピン、ベトナムを除いて表面上敵対することはないのですが、内心は中国を恐れ、嫌っているとのこと。比較的中国と関係がいいラオスにしろ、カンボジアにしろ、経済的支援を受けているので唯々諾々と従っているけど、中国の脅威を感じているようです。
 彼の話で驚いたのは、前中国外交部長(外相)の楊潔篪国務委員の言。ASEAN諸国のある会議で、並みいるASEAN代表に対し、「あなたたちは小さな国でしょう。中国は大きい国ですよ。もともと対等ではないんです。それを忘れないように」と釘を刺したというのです。南シナ海問題でもめているこの時期に、露骨にそういう脅しをかけるとは、何という大国主義なのか。
 楊潔篪にそういうことを言われたあと、ASEAN諸国はすべて米国にすり寄ってきて、東南アジア地域に米国が介入し、影響力を行使するよう求めたそうです。元米外交官が明らかにするのですから、ASEAN側の反応はその通りでしょうし、事実、昨今の東南アジア情勢を見ると、米国の存在感が増しています。
 楊潔篪発言のような話は小生も聞いています。タイに軍事政権ができた後、タクシン元首相が海外に逃亡しました。軍事政権は、タクシンが華人の血を引くことから、北京政府が後ろ盾になって彼を引き立てるのではないかと懸念。そこで、軍事政権のある幹部が北京を訪問した際、中国側の幹部に、「タクシンは犯罪者なので、もし中国入りしたら、引き渡してほしい」と要求したのです。
 そのとき、中国幹部はなんて言ったか。「タイは中国と地続きの国ですね。わが軍がもしタイに侵攻、バンコクを制圧しようとしたら、4時間でできますよ。そういう小さな国が中国に指図などしないでほしい」。お前の国などその気になれば簡単に侵攻できるぞなどという最悪、最低の脅し文句を外交交渉の場で言うとは、ヒットラー以下、なんと品位のないことか。
 少なくとも、中国は訒小平の時代では謙虚な感じが見えました。でも、今は経済力世界第2位ですから、大国にふさわしく世界に影響力を持とうと考えているのでしょう。でも、他国の領土、領海を脅かすような力の誇示では周りの国は従いません。孫文がかつて日本に対し指摘したように、大国の寛容さを示して初めて、周辺国はその国の影響力を認めようとするのです。中国は、覇道ではなく、王道、王者の風格を示してほしいと思うのですが、驕れる共産党政権ではそれは無理か。
http://www.youtube.com/watch?v=gSCd3gr_PhY
 上のサイトはマハラック元大使の講演風景。

 上の写真は、皇居近くの公園でまだ桜が咲いているころに写したワンショット。水面いっぱいに浮かんだ桜の花が印象的。