つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

政権離脱前に馬英九総統の嫌がらせ

 台湾の次期総統を決める選挙が行われたのが今年1月16日。小生も取材に行きましたが、もうはるか昔のような感じがします。でも、当選者の民進党蔡英文主席はいまだに就任していません。就任式は5月20日。当選から就任までの継承準備期間が4カ月以上もあるんです、なんと長いことか。米国は11月8日が大統領本選挙で、就任式が翌年1月20日、移行期間は2カ月余りなんですね。このくらいが妥当だと思いますが、、。
 それはともかく、レイムダッグとなった国民党の馬英九総統は、この移行期間にさまざまな嫌がらせの“置き土産”を残す動きに出ています。例えば、国民党資産の“私物化”です。民進党総統になり、かつ立法院(国会)も民進党が多数を取ったことで、国民党資産の”国庫返還”法案を通すことが可能になりました。そこで、国民党は党資産を移行期間中に第三者に売却するなどして処分しようとしています。
 かつて蒋介石独裁政権だった国民党は、日本植民地時代からのインフラ関連企業、あるいは不動産をそのまま大量に引き継ぎました。その豊富な資産で民主化された後の選挙を優位に戦ってきました。党当局者は「総資産は166億台湾元」と話していますが、民進党側は「ほかに隠れ資産が多い」としてこの数字を信じていません。
 確かに財団法人管理などのあいまいな形での所有があり、宋美齢元総統夫人が造った有名なホテル「圓山大飯店」なども法人所有です。そのホテルを売却しようと、党長老が最近、米国のカジノ施設オーナ―と交渉しているとの話が流れています。
 馬総統は、かつての民進党の改名キャンペーンのお株を奪うような行動にも出ています。総統府(植民地時代は総督府)3階の大ホールを、3月29日、国民党の蒋経国元総統にちなんで「経国庁」と命名しました。彼は蒋経国の英語通訳を務めるなど、個人的にも親しい関係にあったことが大きな理由ですが、民進党総統への嫌がらせでもあります。蔡英文女史も国民党元総統の名が付いたホールで儀式をするのを快しとしないでしょう。
 馬総統は外交面でも次期政権に足かせをはめようとしています。1月28日に南シナ海で台湾が実効支配する太平島を訪ずれたのに続き、4月9日には、尖閣諸島(台湾名=釣魚台)にも近く「小釣魚台」などとも呼ばれる北部海上の島、彭佳嶼にも行きました。さらに、日本の沖ノ鳥島に対しても「島でなく岩礁だ」と言い張り、領土、領海問題での日台対立を鮮明しています。
 民進党は対大陸政策を有利に進めるため、ASEAN諸国や日本との関係緊密化を重視しており、新政権下でも領土、領海問題をそれほど強く主張することはないと見られています。馬総統はそれを見透かし、大陸中国と同調するようにこれらの問題を改めてクローズアップさせ、釘を刺したのものと見られます。嫌味な男です。

 上の写真は、毎年5月3日の憲法記念日に行われる恒例の横浜開港記念パレードの風景。