つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

価値観の違う国家にすり寄る愚かさ

 前回ブログで、「フィリピンのドゥテルテ大統領は愚かなり」と書きましたが、やはり今回の中国訪問でそれを再確認した感じです。領土、領海問題を棚上げし、経済援助欲しさにすり寄る姿勢を見せたのですが、国家にとってどちらが優先されるべきか分かっていない。国家意識、国際関係意識がまったく欠如した、そういう御仁のようです。
 政治学で言うところの国家構成の三要素というものがあります。一定の領土、領海を持ち、住民がいて、主権を行使しうる政治システムがあること。つまり、国家にとって一定の領土、領海を持ち、これを守ることが何よりも優先されるのです。ドゥテルテ大統領は、ミスチーフ礁に続いて、スカボロー礁も中国に取られ、軍事基地が造られるのがそれほど重要なことでないという認識なのでしょうか。
 米国が嫌いだから、中国の影響下の方がいいと考えているとしたら、これも残念ながら危うい選択です。というのは、フィリピンと米国は自由と民主主義の国同士、中国は選挙がなく、政権交代のない一党独裁の国です。どちらの政治システムがいいのか、価値観の違う国家群から自国が与する国を選ぶとき、どちらがより自国にとって好ましいか、国の安全が確保されるのか、これは火を見るより明らかでしょう。
 中国の今の政権は、自らになびいてくる国家を歓迎します。一時期の韓国、朴槿恵大統領は大歓迎されました。しかし、韓国が北朝鮮の核との対抗で迎撃ミサイル網「サード」を導入しようとしたら、居丈高に止めろといい、それができないとなると途端に冷たく接するようになりました。
 つまり、中国は、言いなりになる国家なら大歓迎するけど、少しで意に逆らうような行動を取る国家なら、逆に非友好国以上に冷たくなるのです。言葉を替えれば、完全属国ならいいが、配下に入った以上逆らう国は許さないということ。もし、フィリピンが今後、中国にすり寄るなら同じ仕打ちを受けるでしょう。いつの間にか、中国のスカボロー礁軍事基地化も認められざるをえなくなります。
 フィリピン国民が、アキノ政権時代と100%も違う外交方針の転換を唯々諾々と認めているのが不思議です。外交、安全保障政策では、同一国家でたとえ政権があっても大方継続されるのが望ましいと思うのですが、ドゥテルテの大転換に異を唱える人は一人もいないのものなのか。そもそも、米国嫌いという大統領個人の「趣味」だけから、そんな簡単に外交の大転換ができるのか。大いに疑問です。
 個人的な「趣味」、目先の利益を求めるあまり、明確には見えにくい安全保障をないがしろにすると、その指導者は必ずしっぺ返しを食って後悔することになると思います。

 上の写真は、友人の成田にある旧宅で見た竹林。