つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

大口病院事件、証拠固めは大丈夫か

 横浜市神奈川区にあった大口病院。現在は名称を「横浜はじめ病院」と変えていますが、これは、2016年9月に入院患者の相次ぐ中毒死事件が発覚したことで、イメージが悪くなったったことが理由と見られます。つまり、名称を変えなければならないほど病院にとっては存廃にかかわる衝撃的な出来事と認識したのでしょう。点滴液に何度も洗剤の界面活性剤が入れられ、数十人が死亡しているというのはまさに異常事態。この事件でこのほど女性看護師が逮捕され、一件落着の方向に向かっていますが、さてどうか。
 この事件が鮮烈な印象として残ったのは、小生自身が事件発覚の1年ほど前に胃の病気で入院し、点滴を受けていたことがあったからです。もちろん当時、医師、看護師はすべて善意の人ばかりで、そんな不埒なことを考えるなどありえないと思っていました。ですが、よくよく考えれば、患者は病床にいる限り、俎板のコイ。悪意の人がいれば、そういう状況もあり得るのだということを改めて感じたのです。さらに大口なる場所は自宅のある桜木町からそれほど遠くないし、新幹線に乗る際に利用する横浜線では必ず通る駅。それだけに露見した時は身近な事件と感じ、ショックでした。
 患者の点滴液に界面活性剤が混入されたというのですから、間違いなく医療方面に詳しく、状況から内部の人の犯行と見るのが自然です。しかも、混入によって死亡した人は4階に限られていたと言いますから、警察は早い段階から看護師の久保木愛弓容疑者(31)を重要容疑者として絞り込んでいたに違いありません。マスメディアも警察情報や独自取材で、早々に彼女を割り出していたでしょうから、退勤後の彼女を付け回し、路上でインタビュー映像を撮ったのは、逮捕後に流すネタ集めだったと見られます。
 では、なぜ警察は久保木逮捕に2年近くもかかってしまったかですが、それは証拠固めが難しかったからだと思います。点滴液の袋は内部の人ならだれでも触れるものであり、指紋の特定は難しい。テレビ報道によれば、久保木のナース服から界面活性剤の液が検出されたとか、勤務時間でもないときに死亡した患者の部屋に出入りしていたところを同僚に見られたということも証拠になったようですが、これとても犯人に至る決定的なものではない。
 確かに、久保木が任意聴取の段階ですでに犯行をほのめかす発言をしていることは重要な手がかりです。ですが、万万が一、久保木が起訴後に法廷で犯行を否認したら、状況的な証拠だけで裁判官は有罪にできるのか。ナース服から界面活性剤が検出されたとしても、それはいくらでも言い分けができるでしょう。という点を考えると、この事件はかなり自白頼りなのでしょう。自白によって新たな決定的な証拠を得るしかありません。
 警察は恐らく、久保木はそれほどしたたかな女でなく、今後も自供内容を覆さないという確信を持ったから逮捕に踏み切ったのでしょう。でも、選任弁護士の入れ知恵によっていかようにも変わる余地はあります。その意味では、逮捕は薄氷を踏む判断だったのではないかと愚推します。

 上の写真は、箱根で見た変種の白い紫陽花。