つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

栄光ある選手の晩節汚しはさみしい

リオデジャネイロ五輪にも出た女子体操選手の宮川紗江さん(18)が体操協会の重鎮、塚原光男(70)、千恵子(71)夫妻からパワーハラスメントを受けたと告発した問題がいま、世間の話題になっています。このニュースを見てしみじみ思うのは、スポーツの世界ってどこもボス支配が続いているのだなということ。女子レスリング界の栄和人氏、ボクシング界の山根明氏、いずれも現役時代にどれほどのものかは知らないような人がその団体を牛耳っている。これも異常な現象です。
ただ、栄監督、山根会長の前2例と違うのは、塚原夫妻はある程度の年齢の人ならだれでも知っている体操界の有名人。光男氏はムーンサルトなる特異な着地を考案し、成功し、金メダルを複数取って一躍世界の寵児となりました。千恵子女史も年下の小生も覚えているほど、当時としては体操がうまくてかわいらしい選手でした。それが現在では、デブで冷淡で因業ババア風になっているのに驚きました。夫の光男氏も残念ながら、栄光ある過去を持つスポーツ界のオーソリティーとは思えず、小さなそろばんを弾く、中小企業主のおっさんのような風情になっていました。
宮川選手が記者会見で話した内容を翌日、光男氏が「すべてうそ」と完全否定していたのは驚くばかりです。18歳の小娘が意を決して大勢の前で告白したことがすべて虚構になり得るのか。常識的にそれはないでしょう。せめて「彼女に気苦労させて申し訳ない。内容的には少し納得できないところがあるが、、」程度にとどめておくのが大人の対応です。世間のだれが見ても、あの態度は異常でした。彼が客観的に判断して、あの言い方が正当化できると思っているのだとしたら、あまりにも情けない。晩節を汚す感じさえします。
この問題の本質は、要は自分が関わる朝日生命体操クラブに将来性のある選手を集め、そのクラブの存在を輝かしいものにしたいという願望にあるのでしょう。塚原夫妻は事実上体操クラブのオーナーになっているわけですから、そこからオリンピックに選出されるような選手が多ければその分、彼らの地位・名誉、収入も安定的に確保されるということでしょう。
その引き抜きの対象者に宮川選手が選ばれ、そのために現在のコーチを引き離す必要があったのです。コーチが暴力を振るったなどという言いがかりは、引き抜きのための策略でしかありません。第一、コーチングを受けている選手に直接暴力の有無を聞きもしないで、第三者が暴力とか、パワハラとか勝手に認定すること自体おかしな話です。
たぶん塚原夫妻が仕組んだであろうこの引き抜き策略を、体操協会執行部が唯々諾々と認めてしまったことも問題です。逆に言えば、それだけ体操協会における塚原夫妻の存在が大きかった、特に女子体操界においては千恵子女史の力が絶対だったのでしょうね。そうした"絶対権力"の構図をおかしいと感じ、権力者に歯向った宮川選手は実に立派です。
これはレスリング、ボクシング界トラブルの時にも言われたことですが、スポーツの組織は選手ファーストで、その最善の環境を整えてあげるべきで、団体幹部や統率者が君臨し、選手を苦しませたり、虐げたりするような形はあってはならない、それは本末転倒の形です。

上の写真は、終戦記念日靖国神社前で見かけた謎の日の丸掲揚団体。