つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

二階に上がって梯子外された岸田氏が可哀そう

 えー、出場選手がまだスタートラインに着いてないのに、なんで勝利者インタビューなの?ーっていった様相を見せているのが、今回の自民党総裁選。確か、まだ各候補者の出馬宣言はなく、選挙管理委員会への正式な立候補届け出などもない。しかも、最終的に当選者が決まるのが両院議員総会であり、その開催日は14日。まだ2週間も先の話なのに、すでに大勢は決したとばかり、今日のテレビのワイドショーでは、早々と「菅義偉新総理」の人となり、「菅内閣」の組閣予想をやっていたのにはびっくりしました。先走りもいいに加減しろ、他の候補者のことも考えろと言いたくなります。

 来年秋の総裁選を前にして、次期総裁はつい最近までは、安倍から禅譲をほのめかされた岸田文雄が本命で、石破茂が対抗馬という感じで推移していました。でも、安倍は早々の辞任を思い始めたのか、6月ごろから麻生副総理と数回サシで会談。2人は「石破にはさせない。だが、岸田では心許ない。石破に勝てそうにない」との思いを一致させ、岸田に代わる”タマ”を探し始めたようです。この2人に二階幹事長が加わって談合し、菅が浮上した。菅は国会議員秘書、地方議員から衆院議員になった人で、同じ経歴を持つ二階は菅に強く親近感を持っており、「菅総裁」に同意するのは自然の流れでした。

 それにしても、雪崩現象というのは恐ろしい。先週末、安倍首相が突然辞意を表明し、次期総裁選びへのプロセスが始まると、安倍ら3人の意向が党内にまたたくまに広がり、今週明けには多くの派閥、圧倒的な人たちが菅支持に回っていたのです。やはり、現在の衆院選挙制度は小選挙区で党公認候補者は一人だけ。となれば、党公認を得るには、党総裁、幹事長にゴマをすらざるを得ない。党の中央幹部が支持した候補者に国会議員が雪崩を打って相乗りするのも、これまた自然の流れでしょう。先走りはともかく、テレビ局の読みは間違ってないようです。

 可哀そうなのは、岸田文雄・党政務調査会長です。安倍から禅譲禅譲と言われて二階に上がって気分良く、余裕綽々でいたところ、突然梯子を外されたのですから。でも、よくよく考えれば、これまでの政治の歴史で、約束ごと、特に政権の禅譲約束などありえないんですね。渡辺恒雄読売オーナーがNHKのインタビュー番組で話していましたが、その昔大野伴睦という政治家が岸信介から次期総裁を約束されたが、反古にされてしまいました。口約束でなく、禅譲を約束する文書まであったというのですが、、。政治の世界はそういう非情さがあるんです。安倍がその岸信介の孫であることを、岸田は知らなかったのでしょうか。

 岸田の最大の誤算は、前回2018年総裁選に出馬しなかったことです。彼は安倍から禅譲の甘い言葉をささやかれて止めたのでしょうが、政治家はもともと戦ってなんぼの人たち。特に総理を狙う人はもっとギラギラすべきですが、期待を裏切って萎えてしまった、あの”中折れ”は多くの人をがっかりさせました。もしあの時、出馬してテレビでの討論番組などで、自らの国家観、実現したい政策などを堂々とぶち上げていたら、有権者、党員の印象も違っていたはず。ここ1,2年、「次期総理にふさわしい人はだれか」の世論調査で、3-4%という野党党首以下の低率にはならなかったでしょう。

 石破は党員全員投票をする党大会開催にこだわっていました。でも、この方式でやっても恐らく彼は勝てないでしょう。地方票を他候補より多く獲ったにしても、自らの派閥議員は19人のみ。では他派閥で彼を支持する人がいるかと言えば、そうでもない。安倍、石破一騎打ちの前回2018年総裁選でも、国会議員から広く支持が得られなかった。本来は庶民人気が高いのですから、なびく議員が出てきてもおかしくないのですが、そうはならなかったのは、彼の人柄、ビヘイビアに関係するのかも知れません。

 上の写真は、カンボジアアンコールワット前の池に咲いていた花。蓮の花か。