つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

「ゴーツゥ」止めるなら、国民にきちんと説明を

 小生は、菅義偉首相の選挙区(神奈川2区-横浜市西区、南区、港南区)に住んでいますので、毎選挙ごとに彼に投票しています。それほど強烈な支持者でもないのですが、自民党の機関紙に原稿を書いている関係上義理もあるし、他に選択の余地もないので。その彼は、選挙区の”田おこし”というか”耕し”に熱心で、選挙がないときでも至るところにポスターが張ってあります。そのポスターには、きりっとした自身の顔のわきに「私はぶれない」という文字も。ところが、昨今の「ゴーツゥ何とか」の突然停止騒ぎを見ると、看板に偽りありという印象は拭えません。

 テレビのワイドショーを見ると、「感染者が多く出ているのになんで『ゴーツゥ何とか』を続けるのか」というコメンテーターの批判が多かったです。確かに、感染者を減らすため密をなくそうとしている時に、その逆の「今お得だから、旅に行け行け」と観光地の密を促すようなキャンペーンはまずい感じがします。ブレーキを掛けるべき時に同時にアクセルを強く踏んでいるのですから。でもよくよく考えれば、「ゴーツゥ何とか」の中止はアクセルのふかし過ぎは止めると言っているだけで、旅行全体も自粛しろと言っているわけではないんですね。

 「ゴーツゥ何とかは止めろ」の掛け声は「旅行はすべて止めろ」「人は動くな」という意味に取られがちですが、それは誤解です。アクセルをふかさないで”通常走行”なら問題はないのです。だから、年末年始であろうと普通の料金なら、十分旅行は楽しめるのです。その説明を首相自身にしてほしかったです。前のブログに書きましたが、この通常走行部分がないと景気を落とし、経済が回らなくなり、感染者以上に生活困窮者が出て、重症者、死亡者以上に自殺者が増えます。ですから、移動、旅行に関しては通常ベースに戻っただけなんだと強調して欲しかったのです。

 ちなみに、居酒屋、レストラン、さまざまなレジャー施設に対しても、一律必要以上に規制を掛けるのはいかがなものでしょうか。今、どの店も、店先にアルコールを置くとか、席のさみだれ配置とか、マスクの徹底とか結構感染防止策を進めています。それなのに、政府や自治体がこれらの場所を”感染の元凶”みたいに決めつけて、庶民の外食、娯楽の機会を奪うような仕儀に出ているのは問題。この業界でも多くの人が働き、生活しているのですから、たちの悪い魔女狩りは止めてもらいたいと思います。

 旅行業に通じた二階幹事長との約束があったのかどうかは分かりませんが、菅首相は「感染拡大につながるエビデンスはない」などと言ってずっと「ゴーツゥ何とか」に固執していました。それが一昨日突然、年末年始の「ゴーツゥ」を止める措置に踏み切りました。直前に「内閣不支持率が支持率を上回る」という毎日新聞の記事が出て慌てたのでしょうか。自身で信念を持って進めた政策ならば、あくまでやり通すべきだったのに、事実上「私はぶれない」という看板を下ろしてしまいました。

 それでも100歩譲って、諸情勢の変化によっては、途中で政策転換することはあり得ますから、今回に限り”ぶれること”を認めましょう。臨機応変という言葉もあるくらいですから。ただ、そういう政策転換をするなら、速やかに菅首相自らがテレビ画面に出て、国民に向け「これこれこういう理由で止める」ときちんと説明すべきだと思います。これまで見ている限りにおいては、菅義偉なる政治家は国民への演説、説明が下手過ぎる。ずっとナンバー2でやってこられた方の限界なんでしょうか。自身の言葉で国民をリードしようという気概が見受けられません。

 政治家は根回しだけしていればいい、所詮世の中を動かすのは自民党の重鎮だから彼らだけにしっかり説明すればいいというものではないと思います。かつて郵政解散を決意した際の小泉首相の国民向け演説を思い出してください、ドイツのメルケル首相やニュージーランドのアーダーン首相がコロナ対策で国民に不便を強いる時に行った演説を見てください。民主主義国のトップなら国民への直接の呼びかけ、理解を求める姿勢が絶対必要です。

 ですから、視聴者が少ないネット動画とは言いながらも、みんながコロナで四苦八苦している時に「ガースーです」などとえへらえへらして出てくる場合ではないでしょう。こう言ってはなんですが、国民向けの演説では小泉さんには遠く及ばないし、安倍前首相と比べても見劣りする感じがします。秋田出身、東北出身で口下手だからというのは理由になりません。口下手でも誠意を感じれば、国民は納得するものです。

 上の写真は東京・北の丸公園入口にある薩摩出身の軍人、大山巌銅像。彼は、戊辰戦争でも日露戦争でもひるむことはなかった。しかも大勢の反対を押し切って、自分が砲兵隊長として攻め込んだ会津藩の元家老の娘を妻にする器量も持っていました。