つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

英のEU離脱も日本の小選挙区制も隣の芝生だ

 英国がEUから離脱して丸1年と少しばかり経ちましたが、英国のこの決断が本当に良かったのかと疑わざるを得ないところが多々表れてきました。何事にも大きなシステム転換を図った場合、メリットもある一方でデメリットも出てきます。そのデメリットは予測されることの方が多いのですが、ほとんどの人はメリットに目がくらんで、意識的にデメリットを無視してしまう傾向になると思います。日本では、国政選挙で採用した小選挙区制への転換など、今、よくよく眺めてみると、デメリットがメリットを上回る典型的な制度改革だったと思います。

 英のEU離脱で一番問題になっていたのは、英国の一部である北アイルランドアイルランド本国との国境画定の件でした。北アイルランドの一部住民は英国からの分離と本国との同化を求めIRAなどという集団を作り、長い間、武装闘争を起こしていました。英国はこの問題を解決する方策として、北アイルランドと本国との境界線をなくし、事実上一体化を認めることにしました。ですから、英からの分離運動は収まっていたのですが、英国のEU離脱という決断で再び”古傷”が浮上してしまったのです。

 アイルランドEU加盟国ですから、英がEUを離脱したことで北アイルランド地区とアイルランド本国との物流、人流がどうなるのか。英政府は離脱に当たり、EU当局とその辺を慎重に話し合ったようです。で、得た結論は、北アイルランドに限っては「特区」の扱いにし、本国・北間の人流、物流は基本的にこれまで通りとすることでした。そうなると、北アイルランドと本国との関係はますます強まる半面、英国本島グレートブリテン島北アイルランドとの人流、物流がぎくしゃくしてきています。

 というのは、EU域内流通の物品はアイルランドから北に自由に入りますが、そのまま同じ英国だからということでそれらの物品がグレートブリテン島まで来てしまったら、英がEUから離脱と言いながら、ノーズロの形になってしまうのです。そこで今度は、北アイルランドから英国本島を行き来する物流が問題視され、監視が厳しくなってきました。北は今後、ますます本国との同化を求めて英国からの分離を求めてくるでしょう。英国では北方のスコットランドも分離独立を希望しており、偉大なるグレート・ブリテンはバラバラになってしまうのではないかと危惧されます。

 日本の小選挙制も、1990年代初め、熱に浮かされるように自民党の一部が小選挙区を主張し始め、野党を巻き込んで結局、この制度を実現させました。二大政党を作り、政権交代を実現するという崇高な目標を掲げたが、結果はどうか。一回、小選挙区選挙で民主党が政権を取ったが、お粗末さを露呈し、3年間で政権は終わりました。その後、野党側に自民党を倒して政権交代を図るという雰囲気はありません。

 政権交代を国民に印象付けるためには、目標とする政策、マニフェストなどの提示が必要なのですが、今、野党側からそんなものは出てきていません。政権を取る気などさらさらないのでしょう。批判ばかりしている野党のままの方が楽、それでいいと多くの議員は思っているのかも。となると、自民、公明両党の政権体制は今後もずっと続くと思います。政権交代など夢のまた夢。まあ、若干の手直しがあるとすれば、自民党が公明を外し、代わりに国民民主党か維新の会を連立に引き込むことくらいでしょう。

 中選挙区制では、自民党の中の各派閥が候補者を立て、自民党議員同士が争う形でした。このため、端から”何とか風”とか”何とかチルドレン”の形で当選してくるような人はおらず、各派閥が吟味した候補者が出て切磋琢磨。議員になっても派閥の先輩後輩の関係でイロハを学び、育成されてきました。腰を据えた議員活動ができるという点では、ステーツマンが生まれやすいと思います。派閥の効果は捨てがたいのです。中選挙区制であれが、少なくとも、今の菅義偉氏のように派閥を持たない人が総理に選ばれることはないでしょう。

 小選挙区制だと、恒常的な一票の格差是正措置がある限り、選挙区が絶えず変わり得るため、有権者が候補者を評価しにくい。したがって、候補者を十分知らないままに風に流されて投票しやすい。また、有権者は支持政党の候補者の人柄が気に入らなくても、まともな政策を掲げない野党に入れるよりましとばかり、消極的な選択で投票する場合もあります。これも二大政党選択の悲劇。中選挙区であれば、もっと選択の幅が広がるのにと思います。

 隣の芝は青いという言葉があります。隣の芝を見ていると素晴らしく良く見えるが、実際にそこに行ってみると、雑草が生えていたり、多くの虫が這っていたりと欠点があるものです。英国が離脱後1年余でEUに復帰することはありえないと思いますが、国家がバラバラになることを危惧するなら、将来復帰も考えるべきではないでしょうか。同じく日本も、いろいろ欠点が目立つ小選挙区制を止め、中選挙区に戻すことを考えた方がいいのかとも思います。

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 上の写真は、横浜・みなとみらい地区のコスモ―ワールドと、大岡川越しに見た新しい横浜市役所ビル。