つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

河井夫妻を見ると、議員も因果な商売

 よくよく考えてみると、議員というのは因果な商売です。当選するためには毎朝駅頭などに立ってほとんど聞く人もいないのに演説したり、見ず知らずの人に笑顔で握手したり、談笑したりしなくてはならない。やっと当選しても、有権者の機嫌を取るために何かの便宜を図ったり、陣笠の時には霞が関の役人を手なずけなくてはならない。そのくせ、マスコミ、特に週刊文春に見張られ、自由に銀座に飲みにも行けない。衆院議員であれば最長4年しかその地位が保たれず、地位を継続維持するためには、またまた見ず知らずの人にへいこらする必要があるのです。

 それでも、”年季奉公”を重ねていけば、それなりの地位を得て利権を手に入れ、ある程度の収入は確保されるのでしょう。ただ、そこまで行くのが難儀です。昨年でも訴追された河井克行(元法相)、吉川貴盛(元農相)の両議員を見ると、やっと大臣のイスに座ったかという時点で未来を閉ざされてしまいました。吉川氏は70歳、それなりのお歳なのでもう引退してもいいのでしょうが、河井氏はまだ58歳、これから政治家として脂が乗る時であり、この年齢で永田町を離れるのは無念でありましょう。

 河井氏は党本部から1億5000万円を”下賜”され、妻の案里女史の参院当選のため地元の有力者に配ったとのこと。彼はそれで公選法の買収の罪で訴追されたのですが、そもそもなぜそんな大金が党本部からこの夫妻に発せられたのかはいまだに謎です。同じ参院広島選挙区の現職自民党議員である溝手顕正氏にはこの額の10分の1程度しか出されていないというのです。まあ、2人当選のためには現職より新人に厚くという言い分はあるのでしょうが、それにしてもかなりのえこひいきのように思えます。でも、訴追されたのは河井夫妻であり、金を出した党本部の方の詳しい事情は解明されないままです。

 その河井夫妻ですが、案里女史が今年2月に参院議員を辞職。続いて夫の克行氏も最近東京地裁の尋問で「買収だった」と認め、衆院に辞職願を出すことを表明しました。一時は夫妻で国会議員という華やかな世界に浸っていたのに、今は一転、ただの無職の男女へ、天国から地獄に落ちてしまいました。克行氏は当時、おそらく妻を当選させるため必死に動いただけ、党本部、有力者の指示通りに金を配っただけなのでしょう。そう考えると、「買収」という罪の形はどうであれ、同情してあまりあります。

 本来なら議員は訴追されても刑が確定するまで辞める必要はないのですが、河井議員夫妻が任期満了前に辞職したのは多分に検察へのポーズでありましょう。もし裁判で「買収」を否定して強硬に議員を続けていけば、検察、裁判所を怒らせ、有罪、実刑にもなりかねません。一応、議員を辞めて謹慎の姿勢を示せば、当局側も「彼らはすでに社会的な制裁を受けた」として軽い扱いにする可能性が大なのです。吉川元農相も同じように議員辞職しています。これは一種の「司法取引」なのかも知れませんが、昔からある議員訴追の決着パターンです。

上の写真は、横浜・みなとみらい地区にある湾内観光船の発着埠頭「ぷかり桟橋」と「象の鼻ピア」。