つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

改憲ムード出たのは中国の”尖閣侵攻効果”

 今日は憲法記念日。小生は子供のころ、国民主権基本的人権、平和主義(戦争の放棄)という三原則を持つ我が国の憲法は素晴らしいものだと教わり、爾来ずっとそう思っていました。ところが、記者になって国際情勢が分かってきて、さらにはさまざまな本を読んだりしてちょっと認識を新たにしないと駄目だなと思うようになりました。前の二原則は文句なく素晴らしいのですが、問題は戦争放棄のこと。自分たちが平和主義を貫こうとしても、周囲の国が許してくれないのです。

 我が国の領土である尖閣諸島が中国に狙われています。昨今、中国側の攻勢が一段と強まっています。この領土を守るのは自衛の戦いだが、自衛戦も立派な「戦争」です。だから、愚かな日本の左翼が言うような「戦争放棄」「戦争止めろ」などというスローガンは、突き詰めれば自衛戦争も放棄し、尖閣諸島は奪われても良いと言っているに等しいのです。ただし、彼らが「侵略戦争は止めろ」と言えば、それは正しい。でも、この言葉は日本政府に対してでなく、中国側に叫んで欲しい。

 現在の領土秩序を変えようとする軍事行動はすべて「侵略」です。中国側にも尖閣を奪おうとするに当たり、自分たちの「論理」「理屈」を持っていることは承知しています。日本側にももちろん領有の正当性を主張する論理があります。尖閣諸島をめぐる日中両国の論理については小生の著作物「沖縄を狙う中国の野心」(2007年、祥伝社刊行)、「島国ニッポンの領土問題」(2005年、東洋経済新報社刊行)で、るる書いていますので、参考にしていただければ幸甚です。今でも、有名図書館なら、置いてあるかと思います。

 昔の侵略行動は露骨で、自国の繁栄のためには、他国を犠牲にしても構わないとばかりに、どの国も侵略行動、植民地化に理屈はありませんでした。でも近代に入り、ナチス・ドイツヒットラーチェコのズテーテン地方を強制併合した際、「ドイツ人が大勢住んでいる」との理由を付けました。これで欧州首脳が集まってミュンヘン会談が開かれたのですが、英仏首脳はナチスの軍事力を恐れてこの併合を認めてしまいました。

 第二次大戦後は、さすがに「これからお前の国に攻め込むぞ。理由はない。ただ、お前の国の財宝と女が欲しいだけだ」と言って露骨に攻めることはありません。一応何らかの理由を用意しています。あのイラクサダム・フセイン大統領ですら、1990年に隣国クウェートに侵攻する際、本当は石油資源が欲しかったくせに、「昔クウェートの土地はイラクが支配していたのだ」という理屈をつけました。

 最近でも、ロシアのプーチン大統領ウクライナの土地クリミア半島を強制併合した際、「ロシア人が大勢住んでいるから」と言い、「住民投票」によってロシア帰属への賛成が多数だったような形を取りました。この行動にロシアは軍事力をちらつかせていたわけですから、ウクライナはこの併合を今でも認めず、EUはロシアを制裁対象にしています。それでも、ロシアは現在、クリミヤ半島支配を既成事実化しているほかに、ウクライナ東部の領土ドネツクルガンスク州に侵攻、実効支配しています。

 これも、「大勢のロシア人が住んでいるから」が理由です。そんな理屈が通るなら、「横浜・中華街は中国人が多いから、中国の領土だ」などとも言われそうですが、今の中国の姿勢からすると、冗談で済まないのかも知れません。独裁国家は、権力者がその執権の正当性、個人の実力を誇示するために、得てして他国への強圧的な姿勢、さらには無理な侵略行動すら取ることがあります。ですから、いかに平和を愛する日本国民でも、自国の領土を守るため、自衛の戦争はするという確固たる気構えが必要。「祖国は誰のものぞ」というイタリア映画を見て、国土防衛の在り方を再認識すべきです。

 憲法記念日に当たり、各大手新聞が憲法改正について世論調査をしましたが、すべての新聞で憲法改正に賛意を示す結果が出ています。あの護憲派朝日新聞でも45%対44%と、改憲支持派が上回っているのだとか。これは完全に”中国効果”でしょうね。中国が露骨に尖閣を狙いに来ている今、自衛隊憲法に書き入れ、合法化しようというムードが国民の大多数に出てくるのは当然のことかと思います。

 上の写真は、トルコのカッパドキア。トルコは今、ロシアとウクライナが対立する中、地中海から黒海に至る狭い海上ルート、ボスポラス、ダーダネルス両海峡を抑えている国なので、動きが注目されています。