つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

「コンパ」スタイルの居酒屋はなぜ今ないの?

 テレビを見ると、毎日コロナ、コロナの話ばかりで本当にいやになってしまいます。先日、小生と同じくらいの歳の友人に「たまには飲みませんか。いや、場所は酒場ではありません。〇〇さんの自宅です」と集まりを呼びかけたのです。参加人数が限られているし、ワクチンを打った年寄ばかりでほとんど外出しないのですから、感染の心配はほぼゼロ。で、相手から当然「ぜひ参加します」との返事があるのかとも思ったら、漠然と「外に出るのか恐いので」という理由で拒否してきました。「目に見えないものを、それほど怖がってどうするの」と思わず、言ってやりたくなりました。

 今年になってほとんどの日々が非常事態宣言下であり、もう自宅待機は飽き飽きです。友人と酒場で談論風発したり、カラオケ店で大声で歌ったりといったことにはサッパリ縁遠くなり、小生などはストレスがたまりそうです。ただ、件(くだん)の友人のように、きっちり宣言を守り、外に出たがらない人がいるのを見ると、本来はそちらの方が正常で、小生の意識の方がちょっと異常なのかも知れません。

 酒場、カラオケ店、劇場・映画館などが長い間休業したために、経済活動はずたずたにされ、休業補償のための財政支出はウナギ登り。これがすべて赤字国債で埋め合わされると考えると、将来が空恐ろしくなります。前にも書きましたが、すべて一律に酒場、カラオケ店は御法度というのは止めにして、ワクチン接種を受けた者、2日以内のPCR検査で陰性になった人などには「コロナ陰性パスポート」を与えて、自由に出入りできる選別方式に持っていってもらいたいと思います。

 コロナ前は、居酒屋で大勢で飲むのは当たり前だと思っていました。今さらながら思うのは、人生において飲み屋の存在というのはいかに大きいかなという点。で、今、夜な夜な考えるのは、コロナ明けにはどんな飲み屋、カラオケ屋に行こうかなということばかり。そう言えば、小生の若いころに比べて、飲み屋、カラオケ屋の形態も大きく変わったところがあります。大衆酒場はそれほど違いはありませんが、若者の行きそうなところは大きく変わりました。

 小生の学生時代などには、「コンパ」なる酒場がありました。大きな馬蹄形のテーブルに止まり木が付いていて、中にバーデンダーが一人。一杯の値段が安いので、学生の分際でも、恰好付けてジンフィズとかジントニックとかマティーニとかのカクテルを頼んでいました。コンパの良さは、明るい雰囲気の中で同じ馬蹄テーブルに座った者同士の顔が見えるので、どんな人か分かること。そこで最初はよそよそしくても、当たり障りのない話から始めて、そのうち「私に一杯おごらせて」などと言って近づくことができます。

 五木ひろし木の実ナナが歌っていたデュエットソングの「居酒屋」の中にも「もしも嫌いでなかったら、何か一杯飲んでくれ」という歌詞がありますが、まさにその世界。そういう意味では、コンパは男女出会いの場でもありました。今、どの盛り場に行ってもこのコンパ形式の酒場はなくなりました。余計なお世話かも知れないが、今の若い男女はどこで出会い、ナンパをしているのだろうか。こんなスタイルの飲み屋があってもいいと思います。もし、今時の若者に受けないとしても、昔若者だった小生ら年寄りがノスタルジーに駆られて、行くと思います。

 また、歌が歌える店は、今のカラオケ店のようにグループごとの個室になってしまい、まったく第三者との交流がありません。でも、昔は「ともしび」などという歌声喫茶があり、入場者に歌詞ブックが配られ、一人のアコーディオン演奏の下で客がロシア民謡などを合唱していました。小生より上の世代の光景ですが、あれはあれで良かったと思います。合唱であれば他人の風情も分かるので、友人を作る絶好の機会でもありました。今、なぜなくなってしまったのか。これも、昔の若者、今の年寄り向けに再建してもらえないでしょうか。

 そう言えば、先日石原裕次郎の古い日活映画をみていたら、キャバレーが登場していました。小生にはほとんど縁がなかったのですが、昔は確かに、客が据わる個別のテーブルにホステスが侍り、中央の舞台で踊りや歌や漫談などを披露する酒場がありました。「ハリウッド」とか「ロンドン」」とか「ハワイ」とかいうキャバレーはテレビで宣伝していた記憶があります。その名は今、盛り場でとんと見ませんね。

 てなことを思いながら、今日の夜も、部屋で日本酒をコップに注ぎながら、独り酒をしています。春ごろまではオンライン飲み会もしていましたが、やはりオンラインでは同席者の息吹も感じられないし、虚しさは隠し切れません。それで、最近はやっていません。

 上の写真は、横浜みなとみらい地区の万国橋近くの高層アパホテルと運河に浮かぶ屋形船。