つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

プーチンが「相互確証破壊」を恐れない理由

 ウクライナ紛争で、プーチン核兵器を使うぞといういわゆる大量破壊兵器の先制使用をほのめかしました。日本も加盟している拡散防止条約という国際条約がありますが、もともと核兵器保有している5大国が核を厳重に管理するので、その他の国は持つなという趣旨で成立したのです。現実には、5大国以外にインド、パキスタン北朝鮮イスラエル核兵器を保持していますが、監視の目は行き届かせ、圧力を加えています。その管理側の5大国の一国が先制使用をほのめかすなどはもってのほかです。プーチンはこの意味合いをどれだけ理解しているのでしょうか。

 皮肉な言い方ですが、核兵器は一番安全な兵器だと言われています。それは大量破壊であるだけに安易に使用に踏み切れないからです。現に、第二次大戦末期に広島、長崎に落とされて以降、使われていません。その理由は、核兵器を互いに持っていることで「お前の国が先に使うなら、こちらも使うぞ」という報復力の恐怖があるからです。これは、かつて米国国防長官であったロバート・マクナマラが主張した「相互確証破壊戦略」という考え方で、自分の方にもこんな兵器を使われては困るという意味で、どの国も先制使用を普通は考えないものなのです。

 プーチンが先制使用による報復力を怖がらないのは国民をないがしろにしているからでしょう。北朝鮮もそうですが、プーチン金正恩も、核兵器を先に使った後、相手方の報復攻撃を受けても自分たちは地下数十メートルの核シェルターの中に避難するので安全。報復核攻撃で殺傷されるのは一般国民だけで、自分らは関係ないという思いがあるからでしょう。ヒットラーも戦争末期にベルリンの地下壕に籠もっていたように、自分は危険なところに身を置かないというのは独裁者の普通の行動パターンです。プ―チンの発言一つとっても、よく見れば自国民軽視、いや国民無視なのですが、それをロシア国民は理解できていないのです。

 また、核拡散防止条約の趣旨からすれば、プーチンは本来、ウクライナに対し、核の脅しをしてはならないのです。同国には以前ソ連核兵器が置かれていましたが、1994年のブタペスト覚書によって独立後のウクライナ核兵器を放棄させ、「核がなくてもわれわれが貴国の安全を保障する」などと甘言を弄してロシアが接収してしまったのですから。他人の高性能の武器を取り上げておいて、その後にこの高性能武器を脅しに使うというのは暴力団でもやらないような汚さ。実に不合理、不条理の極みです。

 相互確証破壊戦略に関連して、日本の戦争中のこともちょっと付け加えておきます。実は、戦争中に日本も理化学研究所仁科芳雄博士を中心に核兵器の研究を進めていました。京大や大阪大でも研究があったと言われています。ところが、戦争末期の日本は資金もなく、十分な研究体制が取れなかったことで、すぐに実戦使用できないと大本営が判断し、最終的に1945年7月26日に原爆研究を放棄してしまいました。この情報はスパイによってすぐに米側に伝わりました。

 ご承知のように、この時期、米側の原爆開発のマンハッタン計画は最終段階にあり、近い将来使用可能になっていたのです。もし、日本の原爆研究が続いてその開発成功の見通しが立っていたら、米側は原爆生産を急ぎ、都市上空に爆発させるような核攻撃をしたでしょうか。日本が7月26日に原爆開発を止めていなかったら、米側はその後の報復力を恐れ、恐らく広島、長崎の使用はためらったと思います。そういう意味で、マクナマラの言う「相互確証破壊戦略」というのは正しい考え方なのですが、当時の大本営は分からかなったし、国民無視のプーチンには通じないようです。

 上の写真は、桜満開時に横浜・大岡川べりに出された屋台。食べ物提供の店や金魚すくい、射的のエンタメ屋さんばかりで、飲食をさせる屋台はありませんでした。