つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

「不倫が文化」より国家の安全保障を考えて欲しい

 石田純一という俳優だかタレントだか分からない御仁。それよりテレビのバラエティー番組に出て「不倫は文化だ」などと言って世間を煙に巻いていた異色ぶりで有名でした。非日常の中から小説が生まれるという考えを持つ小生も、石田の発言にいささか賛成するところがあるので、それほど悪い印象は持っていなかったのです。ところが、彼は最近、国家の防衛問題に関連して「中国が攻めてきたどうするのか」という質問を受けた際、「手を挙げて白旗を掲げればいい」と発言していたので驚きました。これには、さすがに小生もちょっともの申してみたくなりました。

 自国が侵略された時に抵抗せず、白旗を掲げて手を挙げて降伏すると、どうなるか。それは、ロシアに占領されたウクライナのブチャ、ボロディエンカの例でもよく分かります。当該地区の人民は降伏したあと、そのまま普段通りの生活が許されるわけがないのです。家は略奪され、女性はレイプされ、敵対的と見なされた人は殺されるか、集められ、どこかに収容される。自由が奪われるのです。場合によっては虐殺もあり得ます。そういう事態を許容できる人ならば、不抵抗も可能でしょう。

 昔、母校の東京外大の名誉教授が研究会後の酒席で、「私は他国に占領されても二度と武器は持たない」と言っていたことがありました。恐らく自己の戦争体験からそういう信念を持ったのでしょう。その時に小生は「それでは先生は、自由が奪われても戦わないのですか」と聞いたら、「そう、自由が奪われるばかりでなく、殺されても戦わない」とおっしゃていました。そこまでの信念があるなら何をかいわんやですが、石田純一は果たして占領下の極限状況まで考えて言っているのか。恐らく、それはないと思います。

 日本は島国なので外国占領された経験が歴史的にそれほどないのですが、13世紀の元寇では蒙古・高句麗の連合軍に攻められました。本土は辛うじて占領は避けられましたが、九州北部沿岸に来る前に対馬壱岐島が完全占領され、その地の人民が残虐行為の犠牲になっています。そのことは今でも現地に残る碑文に記されています。また、第2次大戦末期にソ連軍が旧満州に攻め入ってきたが、現地日本人は何をされたか。いずれも略奪とレイプです。兵隊が侵略を達成したあとに、そのままおとなしく聖人君子でいるわけがありません。

 国家成立の3条件は、一定領土があって、そこに人民がいて、共通の制度があること。他国の軍隊が入ってきて当該地域の人民を奴隷化し、共通の制度を破壊したら、もう国家ではなくなる。中には奴隷になっても生き永らえたいという人いるでしょうが、残念ながら、それも十分保障されません。被占領地では恣意的に人は抹殺されるし、ナチスに奪われた地のユダヤ人のように意図的にスケープゴートにされるケースもあります。白旗さえ挙げれば、その後はハッピーなどということは金輪際ないのです。

 ついでに石田純一の行動に触れると、彼は2015年、日本で集団的自衛権を認めた安保法制法案が国会で審議された時に反対デモに参加したとのこと。今、スウェーデンフィンランドNATO加盟を目指しているように、世界的に政治、社会制度を共にする国家群が集団的な防衛システムを目指す気運が高まっています。軍事力で他国に脅威を与える中国、ロシア、北朝鮮という独裁政権の”悪の枢軸”が日本を取り巻いている以上、一国の軍事力で領土を守り切れない日本は集団的な自衛の道を目指すのは当然です。

 自由、民主主義、人権のないロシアや中国に支配されてもいいのか。甘んじて受けられるのか。万が一、男女間の道徳に厳しいタリバンなどに支配されたら、「不倫が文化か」などととても言えない。石田先生も高尚な文化論を主張する前に、自由な発言ができる国、人権が守られる国をどう守っていくかという独立国家の安全保障をじっくり考えて欲しいと思います。

 上の写真は、グーグルのピンタレストから取ったアザラシ。可愛い。