つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

ウクライナ戦争半年で、戦場日常視する心が怖い

 ロシアがウクライナ領内への軍事侵攻を開始したのが2月24日だから、今月24日で丸半年を迎えます。なんだか最近、日本のメディア(日本に限らないのかも知れませんが、、)はこの戦争への関心をなくしたのか、定時のニュース番組の中ではあまりこの戦場の模様を伝えていない。あたかも戦争が終わっているとも思わせる印象ですが、当事者であるウクライナにとっては祖国が奪われるかどうかの瀬戸際ですから、日本、世界の変わりように怒っていることでしょう。

 そんな中、7日夜放送されたNHKスペシャル「戦火の放送局-ウクライナ記者たちの闘い」というドキュメンタリー番組は秀逸でした。子供2人を持つウクライナの女性記者が自らへの危険を顧みず、依然ロシア軍が自国領土内で何をしているかを追及し続けています。ロシア軍に占領されかかっている戦火のドンバズ地方にも赴き、現地住民にインタビューを試みています。戦争取材など経験したことのない小生からすると、このジャーナリスト根性に頭が下がる思いがします。

 ただ、残念なことに、半年という時の経過は世界の人々をして目を慣れさせ、最初は悲惨な戦場に驚き、悲しみ、憤慨していた感情が徐々に薄れていっているのは事実ではないか。その分、ウクライナ国民への同情心もなくなるばかりか、無関心にもなる。日常化というのはそういう危険性を孕んでいます。小生もそうした感情の”劣化”を催している一人ですから、再度戦争への認識、感情を呼び起こすという意味では、NHKの当該ドキュメンタリー番組が見られて本当に良かったと思います。

 欧州人は概して、日本人よりウクライナ戦争をかなり身近に感じていたと思います。だがら、戦争開始当初は武器支援し、避難するウクライナ国民に同情的であり、温かく迎え入れる姿勢を示していました。ところが、半年経ち、ロシアが欧州向け天然ガスを大幅削減するという挙に出ると、欧州人の雲行きも怪しくなってきました。比較的貧しい欧州国々では高騰した天然ガスを購入しにくくなり、国民に電力の大幅削減を求めているからです。それで、その怒りが戦争を止めないゼレンスキー大統領に向かい、彼をいぶかるようになりました。

 外電を見ていたら、スペインでは今夏、政府がすべての施設で冷房を27度以下に設定してはならないとのお触れを出したそうです。ちなみに、冬では室内の温度を19度以上にしてはならないとのこと。小生は寒いのが大嫌いですから、室温27度以下などにしたら寒くて過ごせませんが、暑さ嫌いの欧州人は30度前後の室温などは耐えられないのかも知れません。逆に冬、小生の部屋では毎年だいたい25度以上に設定していますから、19度以下なんてとても考えられないが、寒さに強い白人欧州人なら問題ないのかも知れません。

 EUの中でもハンガリーNATOの中でもトルコのように対ロシア関係でうまく立ち回り、安い天然ガスを継続入手しようとしている国もあります。他の欧州各国はウクライナへの連帯を示し反ロシアを貫き、高いガス料金、それによる高物価にじっと我慢しています。だが、その我慢は果たしていつまで続けられるか。現に、フランス野党「国民連合」の女性党首などは「ロシア制裁は自分の首を絞めるだけだから止めろ」と政府に迫っています。そうした声は今後、暖房、すなわち天然ガスが本格的に必要になる冬が近づけば近づくほど大きくなりそうです。

 日本もサハリン2の問題でロシアから企業構成の枠組み転換を求められています。このままG7諸国とともにロシアへの強硬姿勢を取り続けるのか、「サハリン2は日本の死活的なエネルギー源」ということでロシアに擦り寄るのか、岸田内閣も厳しい選択が迫られそう。と見ると、ウクライナへの侵攻で西側は経済制裁という怒りの鉄拳を振り下ろしたはいいが、実は”貧乏国”ロシアの国民はそれほどこたえず、逆に報復の応酬で音を上げているのは西側の方だったということになりそうです。

 だが、それでも、ロシアの軍事侵攻は認められない。ここは「正義」を求める自由と民主主義先進国の矜持として、物価高、不自由さにずっと耐え忍び、ロシアを窮地に追い込むしかありません。

 上の写真は、京都・鴨川の「川床」。ただ、川床って本当は貴船にあるように座敷の下に川が流れる風情が本当で、鴨川の川床はどちらかというと「河原床」。