つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

世界で今、自由な国・地域が減りつつある悲しさ

 根源的な問題提起です。安倍元首相は昨年暮れ、「台湾有事は日本の有事、日米同盟の有事」と言い、岸田首相もバイデン大統領に「台湾有事の際には米国とともに然るべき役割を果たす」と約束しました。で、改めて台湾に中国軍が侵攻してきたら、日本は無条件に台湾の防衛戦争に参加すべきかとどうかという点を検証したい。立憲、共産など左寄りの人たちは「安倍の考え方はとんでもない。他国の内政に干渉すべきでない」と言っています。でも、本当にそう見ていいのか。中国が台湾に軍事侵攻しても対岸の火事、嵐と見て放っておいていいのか。

 日本は「一つの中国」の立場に立ち、それで中華人民共和国を承認しているのですから、建て前から言えば、中国軍の台湾侵攻は内政問題、その国の勝手ということになるのでしょう。でも、よくよく考えて、台湾が中国と一体化すれば、台湾海峡は中国の「内海」、バシー海峡は「半内海」ということになります。日本の石油の8割以上を中東に頼っているほか食糧も何もかも台湾海峡バシー海峡を通っているため、日本にとって重要な輸送ルートです。その場合、恐らく太平洋の西南海域も中国の支配下に入るでしょう。それらを中国に完全に抑えられるデメリットを考えるべきです。

 ロシアもウクライナも、黒海から地中海に出る首根っこを抑えるトルコと輸送面での協議が必要なのを見ると、輸送ルートを他国に一元的に支配される怖さがあります。海域支配の国がいつでも他国の輸送船を臨検することができるし、場合によっては航海を妨害、停止することができる。今の中国を見ると、政治的な理由をすぐに経済に転化させ、不愉快なことがあると輸入を停止したりします。かつて日本が尖閣諸島か何かのトラブルでレアアースの輸出停止を食らったりしたが、エネルギー、食糧のルートを抑えられたら、死活的な問題になります。

 ノルウェーはかつて平和委員会が民主活動家の劉暁波ノーベル賞を授与すると、鮭の輸出を停止されてしまいました。今、中国は、オーストラリア、台湾の鉱物、農産品の輸入を止めている。このように中国は政治と経済を結びつけるのが”得意”で、しかも臆面もなくやる国なんです。日本が中国に不快感を与えたら、台湾海峡を通さないという報復に出ることは目に見えています。今、ロシアの報復で日本から欧州への航空便はシベリア上空を通れないために時間とコストがかかっていますが、そういう事態を招くことは必定です。

 小生は4年ごと実施の台湾総統選の取材に行っていますが、かの地の住民たちは心から自由と民主主義、特に選挙制度謳歌しています。中国が台湾を軍事占領し、その翌日から共産党の支配になり、台湾住民に「一党独裁下なのだから選挙は止めろ」「やるなら香港のように翼賛選挙にする」と言ったら、かの地の人たちは納得するのでしょうか。中国はよく中台は民族的に同じ、血の濃さがあると言いますが、小生は、自由と民主主義という制度は血の濃さを超えるものだと思います。

 台湾人にとって大陸、共産党に支配されるメリットって何かあるのか。何もない、と考えると、同じ自由と民主主義を標榜する国である日本国民がそれを失う地域が新たにできることを看過できますか。それも日本の隣にある地域で、人民間の友好の交流は大陸を越えているのですから。大陸は共産党が支配したので皆満足に生活ができるようになったと宣伝しています。現時点でこれが台湾支配の理由になるとは思えない。

 「人はパンのみにて生くるにあらず」。そう、たまにはご飯もそばも食べたいという冗談はともかくとして、食べることは大事ですが、人間には食べること以上に必要な要素があります。それは尊厳ある生き方です。食べて生きるだけだったら、奴隷も刑務所の囚人もそうです。でも我々は奴隷にはなりたくない。ウクライナ人だって抑制社会ロシアの奴隷にはなりたくないでしょう。だから抵抗するのです。自由にものを考え、自由に発言し、自由に仲間と集い、そして意見交換する。小生的に言えば、表現、発表の自由の確保、書きたいものを書く、制約なく思う存分小説を書くという境地は決して侵されたくない。

 でも、世界にはそれができない国・地域がどれほど多いことか、タリバンアフガニスタン、軍部が支配するミャンマーを見るにつけ、近年、そういう国・地域が今増加しつつあると感じる。悲しんであまりあります。

 上の写真は、京都嵐山奥にある化野念仏寺の竹林と石仏群。