つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

再び根源的問題提起、軍事侵攻で何の得がある?

 再び根源的な問題提起です。そもそもロシアは隣国ウクライナに軍事侵攻して、いったいどういう得があるというのか。19世紀ならまだ分かる。侵略して植民地化すれば、その地の資源その他の利益を獲得することができる。でも、21世紀の今は、物のやり取りは自由にできるし、犠牲を払って強奪することより、友好関係を維持し、交易で長く必要な物を手に入れる方がかなり賢いと思います。どう考えても、どう見ても、ロシアが隣国に攻め込んだのは得策とは思えないのですが、プーチンはこの損得をどう考えているのでしょうか。

 まず、人間同士の感情の問題。プーチンがいみじくも指摘するようにウクライナはロシア人にとってほぼ同胞の民族であり、ウクライナ人側ももともと同じ国で親しみを感じていたと思います。それなのに戦車で踏みにじって隣人を殺し、一部では強奪、強姦もしています。これで長年の両国の誼みはずたずたになってしまった。それまでロシアに親しみを持っていたウクライナ人も家族や仲間を殺され、憎悪を募らせ、絶対許さないとの感情を持ったことでしょう。この感情は今後、数十年、いや1世紀以上にわたって続くものと思われます。

 ロシア軍はウクライナのドンバス地方、さらにはクリミア半島に続く南部ヘルソン州などの領土を確保したが、そのためにどのくらいの犠牲を払ったか。戦争開始1カ月後の3月25日、ロシア国防省は「戦死者を1351人」と発表して以後、口をつぐんでいます。ウクライナ軍はこの時点でロシア軍の戦死者は約1万5000人との見方をしていました。今、戦争開始から間もなく半年を迎える時期、米国のハイマースという高性能ピンポイントロケット砲などの砲撃を受けてロシア軍の死者は恐らく2万以上ではないか。一説には4万人を超えるという見方もありますが、、。将官クラスも10人以上が戦死しています。

 それだけの犠牲を払って領土を支配し、その土地から得るものが何かあるのか。強制的な支配、占領によって、そこに住む民の憎悪をずっと受け続け、場合によってロシア人軍人、一般人ともテロに遭うことも考えられる。得られる資源は何もない。まだ、クリミヤ半島の支配なら分かる。そこにはソ連時代からのセバストポリという軍港があるので、これを確保していたいという思いは理解できる。でも、ドンバスもヘルソンにも、国境地帯を除いてそれほどロシア人住民は多くないので、ロシア軍による「解放」感などとは縁遠い。ただ、野蛮なロシア軍に支配されるウクライナ人の憎しみの感情が募るだけです。

 国際関係に目を向けます。プーチンは少なくとももう西側先進国には足を踏み入れることはできないでしょう。戦争開始後、タジキスタントルクメニスタン中央アジア諸国、イランを訪問したが、中央アジアはロシアの勢力圏、イランは「悪の枢軸」の仲間なので、別段驚くに当たらない。西側先進国との交流がない限り、少なくとも世界的な指導者として認められない。バルト3国からは「ロシアをテロ支援国家に指定せよ」などとの声が出ているくらいですから、欧州ではまともな指導者との認識はすでに持たれていません。

 ロシアの経済から考えて戦争は損か得か。確かに、比較的に安価なグローバルサプライチェーンに頼っていた欧州などは天然ガスの締め上げで困っています。ただ、よくよく見ると、ロシアはエネルギー、農産物という一次資源で外貨を得て潤っていた。欧州などとの取引が止まれば、これらの外貨を失い、長期的には痛手になる。エネルギー、農産物は今、中国、インドなどに代替で買われているけど、それは足元を見られて欧州価格に比べて安く買いたたかれているはずです。

 意外に知られていないのですが、ロシアは膨大な兵器輸出国家。それで多額の外貨を得ていたのですが、これが怪しくなってきた。というのは、ロシアの兵器のかなりの部分、一説には400件以上の部品が西側からの輸入品であり、この輸入が滞ると武器製造ができなくなるのです。武器輸出での外貨を失うどころか、自国産の武器生産ができなければウクライナ侵攻戦争の継続にも支障を来しそうです。

 今はコロナの影響で外国旅行はできにくい状態にあるけど、かつてはロシアの富裕層は自国の寒さに耐えきれず、冬季に東南アジアなどに旅行していました。コロナ明けにロシア人は従来通り外に出られるのか。多くの国でビザを出さないのではないかと思います。暖かい国ならどこへでもと言うのならアフリカや中東などへの旅行も考えらえれますが、恐らくそんな国は選択したがらないでしょう。ロシア人は海外に出ても、冷たい目で見られる悲哀を味わうことになるのでしょう。

 上の写真は、横浜みなとみらい地区の建設現場の壁に描かれた絵。