つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

イタリア新政権よ、ロシアに迎合する蝙蝠になるな

 じいちゃんから教えを受けたイソップ寓話。その中に卑怯な蝙蝠(コウモリ)の話というのがあります。哺乳類と鳥類の戦いが起き、哺乳類側に戦況有利な時に、そちらの方に行って「儂は体がネズミみたいなので、哺乳類の仲間じゃ」と言う。でも、鳥類側が有利になると、「儂は空を飛べるので、鳥と同じ。私はあなた方の仲間よ」と媚びを売るのです。一方に付くようなふりして、別のところでは別のことを言う。状況次第で変節する、二股をかけることを「蝙蝠男」と言います。

 小生はガキのころ、じいちゃんに「蝙蝠になるな」と言われて、しみじみこういうどっちつかずの人間にはなりたくないと思っていました。山崎の合戦時における筒井順慶の態度を皮肉った「洞ヶ峠を決め込む」という言葉があるように、普通の人間は、勝つ方に付きたい。そこで最後まで旗幟鮮明にしたがらないのですが、長い目で見るとそれは決して良い結果を生まないことが、小生も七旬を超える人生で分かりました。余談ですが、結局、蝙蝠は動物学的にどっち。それは言わずと知れた哺乳類です。

 大好きだったじいちゃんはそれから、「いいか、夕方空に飛ぶ蝙蝠を竿で落としてもいいが、絶対手で触るなよ」とも言ってました。その理由をじいちゃんは言わなかった。実は、彼もその真の理由が分からなかったのだと思いますが、蝙蝠は危ないということを経験的に知っていて、孫に触らせまいとしたのでしょう。今、思い出すたびに物知りなじいちゃんに感謝して余りあります。確かに、最初に中国武漢市で新型コロナウイルスが爆発的に流行った時に、最初に疑われたのが蝙蝠でした。蝙蝠は普段でも病原菌、ウイルスを持っているのです。

 それはともかく、二股の話。国家にも二股をかけるところがあります。例えばインドやインドネシア、ブラジルなど。インドは中国、パキスタンとの国境紛争を抱えているので、クアッドのような中国包囲網に加わる一方で、上海協力機構に属してロシアや中国にも与する姿勢を見せています。ロシア包囲網に加わらなければ、かの国の原油を安く、大量に購入できるのも一つの大きな魅力でしょう。それを見たのか、欧州では、天然ガスが来ない今、原油を欲しがり、第三国の船にロシア原油を積み込ませ、瀬取りの形で自国に引き込む国も出てきました。

 抜け駆けの瀬取り輸入は本当はまずいと何となく分かっていても、背に腹は代えられないということか。それでも、瀬取り輸入を秘密にしており、ロシアとの関係を公にしていない分、まだ許せましょう。残念ながら、これから冬にかけてEU諸国の状況はもっと不利になります。ノルドストリームから天然ガスが来ないので、暖房に必要な化石燃料がますますひっ迫してくる。それを受けて今後、”正々堂々と”EUの決議を裏切るような国家も出てくる気配濃厚です。

 イタリア総選挙で、プーチンに対して迎合的と言われる政党「イタリアの同胞」ジョルジャ・メローニ党首らの右派連合が多数を占めました。メローニは、あるいは「国民も総選挙で(ウクライナ支援より自国のエネルギー、食糧確保が優先という)そういう意思を示したのだから、寒い冬を過ごすぐらいなら、ロシアに妥協しても良い」という方向性を示すかも知れません。ハンガリーのように表立ってロシア産原油を買いに出る可能性もあります。

 G7国のイタリアがそんなふるまいをしたら、EU結束への影響は大きい。高値の化石燃料に四苦八苦しているスペイン、ポルトガルギリシャなどEUの貧国が雪崩を打ってイタリアに追随し、対ロシア制裁を止めることになりかねません。実は、瀬取りにはギリシャ船舶が絡んでいるという噂もあります。アリの穴から堤防が崩れるということわざがあるが、世界の良心のメルクマールとなっているEUという組織がイタリアの動向次第で危機に瀕する恐れもありましょう。

 今、一番考えなくてはならないのは、EU全体の安全保障。多数の国が自国のことを優先させ、ロシアとの二股に走り、ウクライナを忘れたら、やがて苦境にあるロシアを蘇らせ、勢いづかせて、火の粉がEU自身、とりわけロシア周辺国に迫ってきます。イタリアの変節によってそういう方向に行かせてはなりません。西側の一員である日本は遠くに離れていても、メローニ新政権に対し必死の外交努力が必要なんだと思います。

 上の写真は桜木町の呑み屋街、野毛の風景。朝鮮焼き肉屋の前のエンジェル、ミッキーと寿司屋の前の美空ひばり像。