つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

岸田氏は総裁選でなぜ自己アピールしない

 9月に行われる自民党の総裁選は、今後3年間の首相選びですから、非常に関心のあるところ。安倍首相は3選を狙ってすでに根回ししているようですが、問題は彼の対抗馬。石破茂元幹事長は2012年総裁選敗北の雪辱を期して事実上スタンバイの状態で、恐らくお盆のころに出馬表明する見込みです。で、安倍−石破の一騎打ちになるのか、それとも伝統ある宏池会の領袖、岸田文雄氏も出馬し、三つ巴になるのかで注目されました。結局、岸田氏はこのほど早々に出馬の意思がないことを表明し、世間をがっかりさせました。
 岸田氏は3年後の安倍後継を狙っていると言います。安倍首相は国会閉幕前後からしばしば岸田氏に会って、将来の禅譲をほのめかしていたとのこと。これを受けて岸田氏も総合的な判断から、出馬を回避したのでしょう。確かに、日経新聞世論調査で、彼の次期首相期待度はわずかに3、4%程度と野田聖子総務相以下でした。
 こんな人気のなさでは、今次総裁選で地方票などとても取れないと予測したのでしょう。地方票とはすなわち一般党員の評価ですが、これが2012年の前回より比重を増し、405票と国会議員票と同数となっています。
 あるいは、仮に出馬して議員、地方票合わせた獲得数がかなり少数であった場合、派閥領袖としての力量が問われ、領袖交代論が出ることを恐れたのかも知れません。でも、この判断が果たして的確なものなのか。
 新聞などを読むと、森内閣の時に宏池会の領袖だった加藤紘一氏が森首相に反旗を翻し、野党の出した内閣不信任案に乗り、賛成票を投じようとして失敗、政治家として終わったことがありました。岸田氏はこの加藤の二の舞を避けたいとの思いも強いと言われています。つまり、彼は時の権力者と戦わないで、何とか円満に熟柿作戦でトップの座を手に入れようと考えたのでしょう。
 でも、世の中そんなに甘くないのです。冷静に考えれば、自民党の歴史の中で、禅譲なるものがあった試しがありません。政治は一寸先が闇なのです。岸田氏が安倍の甘言にすがるとしたら、愚かなことと言わざるを得ません。いや、仮に安倍氏が後継に指名したところで、その時は安倍はすでに支持率を低下させ、ボロボロになっているはずですから、彼の派閥(細田派)の連中も言うことを聞かないでしょう。
 岸田氏がなぜ世論調査で人気が出ないかと言えば、彼自身がこれまでそういう自己主張の機会を捨ててきたからにほかなりません。総裁選挙は政治家としての自らの政策、人柄すべてを世間に知らしめる絶好の機会です。岸田氏は今、61歳、政治家として油の乗り切った時。こんな時に、自らをアピールする機会を放棄して、競争を回避しようとするのは理解に苦しみますね。こんな弱気では、たとい3年後、次の機会に出てきたとしても世間は認めないでしょう。
 小泉首相は自らの断固たる政見を持ち、何度も総裁選に出てアピールしました。それが彼の強烈な個性となって、世間に受け入れられたのです。彼を見習ってほしいと思います。禅譲期待で、今は陰に隠れるなどというのは最大の愚策。総裁選での競争は、加藤の乱のような野党の不信任案に乗るといったイレギュラーの行動でなく、世間注視の公明正大なイベントのなのですから、堂々と名乗りを上げ、主張してほしい。そうしないと、彼の派閥の議員たちからもやがて見放されることになりかねません。

 上の写真は、鴨川シーワールドの熱帯魚。