つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

丹東で日本料理店を経営する夫妻

 昨年夏に中国の吉林省遼寧省に行って、中朝国境方面を取材したことは、前にこの日記で報告しました。その際、国境最大の町・丹東市を訪れたのですが、ここで日本料理店に入り、経営者と知り合いになりました。店の名は「千太郎」。ご主人はまだ30代の若い漢族の中国人で王千さんといい、その名を使って日本的な店名にしたとのことです。奥さんは日本人で、東京都豊島区出身の方でした。
 そのご夫妻が春節を利用して日本に里帰りするというので、中朝取材団に加わった4人でささやかな歓迎宴を開きました。丹東市は、鴨緑江を挟んだ対岸、北朝鮮側の新義州と並んで、旧満州時代には数万人というい大勢の日本人が暮らしていたところですが、今では10人前後しかいないそうです。
 日本に来たためか、ご主人は打ち解けて店経営の苦労話をしてくれました。特に、従業員の扱いは大変だとのこと。今月はよく働いたからと思い、無理して少し余計に給与を出すと、「なにこれだけか、もっと出せるのでは」と言ってくるし、特定の個人にあげると、その情報はすぐに他の従業員に伝わり、ややっこしい事態になる。
 勤務中に携帯電話をいじっているのを注意すると、「なぜ、問題視するのか」という反応を示す。さらに、コックも店員も店には寸分のロイヤリティーはなく、ほかに高い給与をはずむところがあれば、すぐに移ってしまう。ですから、従業員はクルクル変わり、固定化はほとんど無理。また、公安(警察)が当然のように店で飲み食いし、当然のように支払わずに帰ってしまうとのこと。ま、これは形を変えた強制ワイロでしょう。これには、「でも、公的な機関はあとで客を連れてきてくれるので、我慢している」と王千さんは言います。
 王千さんは日本の大学に留学し、たぶん、さまざまな客相手の日本のアルバイト先を通じて、日本的な情緒を身につけてしまった人。奥さんも日本人なので、日本人的な情緒で経営しようとしたのでしょうが、小生は「それは間違いだ」と改めて忠告しました。
 小生は、香港時代に経験していますが、中国人は好意を示すと好意で返すという習慣がないのです。あなたを1000元で雇うと決めた以上、絶対にびた一文プラスして払う必要はありません。契約至上主義で、好意はむしろあだになるのです。日本的情緒を身につけてしまった中国人に、日本人が改めて中国人の特性を教えるというのも面白い経験でした。
 下の写真は、小宴会での集合写真。真ん中に王千さんと奥さん、その周りが中朝取材団の4人組。