つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

李鵬も6・4事件で本を出版

higurashi-takanori2010-06-13

 このブログでも触れているように、小生は今春出版された「趙紫陽極秘回想録」の監修に当たり、同書末尾に解説も書きました。人伝てに聞くところでは、この本はそれなりに売れているそうで、関係した者からすれば、うれしい限りです。日本にも趙紫陽氏の晩年の声が伝わり、さらに喧伝されれば、本人もさぞや草場の陰で喜んでいることと思います。
 ところで、香港からの報道によると、趙紫陽氏の政敵と言われた李鵬氏(元首相)も天安門事件関係の本を出版するそうな。その書名は「李鵬”六四”日記」。それはいいのですが、驚くことにその出版元が、趙紫陽本を出版したのと同じ香港新世紀出版社なのです。
 この出版社は実は、趙紫陽氏の政治秘書をしていた鮑トウ氏の長男鮑朴がやっている会社なのです。親爺の政敵とも言える李鵬氏の本の版権をなぜに手に入れたかについて、鮑朴は、「李鵬の手書きのコピーを、ある”中間の人”を通じて彼に渡してきた」とだけ述べ、詳しい経緯については口をつぐんでいます。さて、彼の政治的なスタンスって、何なのでしょう。話題になって売れれば、どんな本でも出すということなのか。
 李鵬氏が書くものですから、多分、趙紫陽本の内容を否定し、さらには自己弁護するものでしょう。もともと趙紫陽本の内容がすべて真実であるという保証はなく、反対派の証言は、それはそれで必要であり、6・4事件に至る経緯がこれで客観的に明らかになるという点では学術的に価値あるものと小生も思います。
 今年81歳になる李鵬氏は現在重い病気を患っているといわれており、もう6・4について語る機会は限られているでしょう。そこで、当時の自分の政治行動が趙紫陽氏に否定され、そのまま庶民感情に固定化されるのはいやだということで、最後に思いの丈を書き遺したことと思われます。
 長男が今年6月、山西省常務副省長になるなど李鵬家は今でも恵まれていますが、本人は今でも民衆に嫌われ、呪われています。歴史的にも、頑迷な保守派だとして恐らく評価されないでしょう。ただ、あえて弁護すれば、南宋の秦檜のような政治家でも歴史には名が残る、そういう生きざまがあってもいいような気もします。
 GWに南寧に行った際、ついでに中越国境地帯を視察、両国をまたぐ川にある徳天瀑布を見てきました。対岸はベトナム渇水時期のためか、水量はそれほどでもなかったです。