つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

上海・浦東地区にはバブルの城

 今月12日から15日まで、またまた上海に行ってきました。小生も絡んだ上海市郊外の合弁企業に韓国人の顧客を案内するのが目的です。われわれ企業の生業、金属加工業の有力なお得意さんになりうる客ですから、最大限のもてなしが必要。社の車で上海市内のホテルまで迎えにきてもらい、その後に80キロ近く離れた浦東地区の工場に向かいました。
 車の運転をしていたのは、中国側企業の総務部長。小生も旧知の人なので、道中いろいろ話が弾みました。彼の話で気になったのは、浦東地区のいなかの高速道路周辺に建っている膨大なマンション群に対して、「日暮、見ろ。あの中には人が住んでいないだろう。バブルだよ」と話していたこと。上海でも少しばかりいなかの人とはいえ、生粋の地元上海人から「バブル(中国語では泡沫)」などという言葉を聞いたので驚きました。
 確かに、戦後の日本の公団住宅のように、数多くの棟が建っている割には、洗濯物、灯りなどの人の気配がありません。たぶん、富裕層の投資家が買ってそのままにしてあるものか、それとも不動産屋と建築業者が結託して建てたものの、買い手がつかず、将来を見込んで寝かせてあるものかなのでしょう。
 せめて近くに地下鉄が来ていれば、今でも売れると思いますが、残念ながら、地下鉄の駅からもかなり遠いところです。建設業者は将来の地下鉄延長、新線を見越して建てたのかも知れませんが、そんなのあっても3年、5年先の話で、人の住まない住宅はほっとけば傷んでしまうはずです。
 それなのに早々と建築したというのは、金融機関の資金のだぶつき、景気停滞を恐れる政府系資金の投入があったからで、需給のバランスはほとんど考えないプロジェクトだと思います。言葉を替えれば、景気のために造ること自体が目的で、その先のことはケセラセラ(なるようになる)ということでしょう。
 人口増が見込める上海ではそれでも、これらの住宅が近い将来売れる可能性はあります。地下鉄駅への路線バスの便を付ければ、売れるでしょう。大都市の上海はいい。だが、地方都市でこんな人の住まない「空城」ばかり造り、しかも実際に売却されず資金回収できないとしたら、結局、建設業者に金を貸した企業、金融機関に膨大な負債が残るだけです。
 金融機関が「設備投資」の名目で企業側に金を貸し、その金が設備投資でなく、不動産投資に流れるという「シャドウー・バンキング」の仕組みが今、問題になっています。小生が1990年代、香港にいたとき、広東省地方銀行が同じようなことをして、負債を抱え、結局、当時の朱鎔基首相がその借金を強引にチャラにしたことがありました。これで日本の銀行もかなりの損害を被りました。
 今回のケースでは金の出所のほとんどが国内銀行ですから、日本の銀行が損害を受けることはないと思いますが、それにしても「くわばら、くわばら」といった感じですね。
 下の写真は、合弁企業がある上海市郊外・奉賢区の工場団地の風景。ここからは工場群だけで、高層住宅は見えません。