つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

クリミア問題で再度分かった国連の限界

 またまた、クリミアの話で恐縮です。実は、クリミアの帰属を問う住民投票を前に、国連安保理でこの投票が有効か無効かについて審議しました。その結果、安保理メンバーの15か国中13か国が無効とし、いつもはロシアに同調する常任理事国の中国も棄権したのです。その結果、当事者である常任理事国のロシアが賛成に回ったところで、13対1の圧倒的多数で、本来この住民投票は無効となったはずでした。
 しかし、ロシアは、当たり前の話ですが、常任理事国の権利である拒否権を発動しています。拒否権の威力はすごく、これで、審議、採決ともすべてちゃら、無効になってしまいました。常任理事国が紛争当事者である場合、この国連安保理がいかに存在感を失うか、その無力性をさらけ出してしまったのです。
 余談ですが、小生は大学の国際関係論の授業でいちばん強調するのが、国連における常任理事国の拒否権の存在と、それによって国連に限界があるという点。拒否権が分からないと、国連の意味も分かりませんし、国際政治も読み解けません。
 日本でもかつて小沢一郎先生などが盛んに「国連主義」を吹聴していました。つまり国連に世界正義の判断とその警察的権力の行使をゆだねるということですが、これがいかに虚しいものであるのか、今回のクリミア住民投票の事態でまたまた明明白白になってしまいました。
 「国連なんてしょせん田舎の信用組合程度のものでしかない」と誰かが言っていました。「田舎の信用組合」という意味合いは、制度がしっかりしていないので、互いを信じる性善説を根底にしない限り、成り立たないということです。国際社会はわれわれがそうあってほしいと望むほど良い国ばかりではないのです。そういうわけで、日本も国連主義の無なることを改めて認識する必要があります。
 ちなみに、中国が棄権というのは意味深長です。本来は欧米に対抗すべくロシアに同調すべきなんでしょうが、中国も国内に少数民族を抱え、新疆ウイグル自治区などで分離独立の動きがあります。もし、クリミアの独立、そしてロシアへの併合をそのまま認めたら、中国も国内の反乱分子から同様の仕打ちを受ける可能性もあり、困るのでしょう。棄権は苦し紛れの選択です。
 教師の立場で言えば、今回のクリミア問題はいろんな意味で国際政治の勉強をさせてもらい、不謹慎ながら楽しませてもらっています。
 下の写真は、伊豆大島岡田港に入港するジェット船。