つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

旅は旅行社ツアーでなく、自分で設計するのがいい

 3月31日から一人で京都、大阪・高槻市鳥取市砂丘兵庫県北部の城崎温泉、それから京都に戻る旅をしてきました。昨年の旅行はほぼ全部旅行社のバスで運ばれるお仕着せツアーへの参加であり、見るべきところは見られるが、なんか物足りないというか、今一つ達成感がない。見たというだけで、自分で歩いたという実感は沸かないのです。その点、一人旅はいろいろ自分でルートや宿泊先を考え、予約し、滞在先での時間も自分で調節できるのでそれなりの充実感があります。まあ、食事で言えば、セットメニューにするか、アラカルトで頼むかの違いでしょうが、その差は食事以上です。

 京都では「新選組友の会」の仲間と落ち合い、壬生寺、壬生屯所跡を散策、山南敬助の墓がある光縁寺を訪れ、顔見知りの個性豊かな住職と楽しい時間を持ちました。夜には三条小橋池田屋事件の跡地にある居酒屋「池田屋」で食事し、ついでに四条に足を延ばし、祇園界隈も歩きました。白川に垂れ下がる桜がライトアップされ、なんと美しいことか。翌日は南禅寺の桜、八坂神社・円山公園の枝垂れ桜も鑑賞しました。こういう名所にはかつて雨後の筍のようにうじゃうじゃいた中国人はもうほとんどいない。代わりに西洋人が大量に来ていたのにはびっくり。西洋人も桜が好きなのか。

 その日午後は、幕末に鳥羽伏見の戦いがあったところ、今で言うと、京阪電車の京都(淀)競馬場駅辺りですが、そこに行き、友の会の仲間と散策しました。昔は原っぱだったのでしょうが、今では工場群か住宅になっていて面影は見出せません。でも、かすかに記念碑があり、戦いがあったことを知らしめていました。今でも、淀城址はありますが、城内の河津桜はもう花を散らせていました。鳥羽伏見で負けそうになった幕府軍がこの城に逃げ込もうとしたのですが、譜代である淀藩は中立を宣言し、幕府軍を城に入れなかったのです。これが幕府軍が負けた大きな原因とも言われています。

 その場で新選組友の会の仲間と別れ、小生は一人京阪電鉄枚方駅に向かい、そこからJRの高槻駅に出て、大学時代の友人と会いました。彼はもともと大旅行会社に勤めていた男ですが、今は碁会所の席亭をしているのです。本人は定年後その碁会所に通っていたのですが、ある日、前席亭が会所の中で心不全か何かでばったり倒れ、死んだとか。そこで碁仲間に押されて、その後任に収まったそうです。

 学生時代、彼の下宿に入りびたり、家に帰るのが面倒なので、たまには宿代わりをお願いしていました。昔から彼の人柄はいい、いつ行っても嫌な顔をしなかったのです。人徳は身を助けるということか。でも今、本人は「今、公民館など無料の場所にも碁を打つところが多いから、高額の席料は取れない。ほとんど実入りにならない」とこぼしていました。小生は「好きなことをして余生を送れれば、それに越したことはないのでは」と慰めておきました。

 その日は茨木市のホテルに泊まり、翌日に大阪梅田に出て、そこから鳥取行きの高速バスに乗りました。高速を使って3時間ほど。鳥取駅前のアパホテルに荷物を置いた後、直ちに鳥取砂丘に出掛けました。小生は日本全国46の都道府県内で宿泊したことがあるのですが、ただ一つ鳥取県だけが残っていました。中国は31の一級行政区すべて回ったことがある人間からすると、日本の47を網羅できないのは心残り。つまり今回、鳥取で満願成就を目指したのです。

 安部公房の「砂の女」の小説も、映画も見ているので、長い間、鳥取砂丘にあこがれていました。ですが、実際に見てみると、正直「なぁん-だ」という感じでした。エジプトの砂漠、中国甘粛省新疆ウイグル自治区の砂漠を見ているので、規模の小ささに拍子抜け。確かに、ここは「砂漠(desert)」でなく所詮「砂丘(dune)」なんですね。岸田今日子のような”砂の女”、砂塵にまみれた肉感女性がいるような雰囲気はまったく感じられない、海外線に普通にあるちょっと大きめの”砂場”でした。でも、これは鳥取最大の観光名所であるようで、外国人が結構来ているのにも驚きました。

 砂丘から路線バスで駅前に戻る時、隣に座った60歳台と見られるおば様は中国人で上海人でした。「日本の関西は2時間で来れるので、北京に行くのと変わりない」などと、あたかも国内を旅行する雰囲気で言う。「滋賀県の何だか美術館がいい」とか、小生も知らないところを延々と説明していました。もう何度も来ているようです。中国は今不景気状態にあるのですが、小金持ちは相変わらず日本に来て楽しんでいるようです。

 この日の夜は、鳥取の駅前、飲み屋街を一人探訪しました。駅前はシャッターを閉めた店舗もあり、なんだかさびれた感じ。至るところに石破茂のポスターがあり、ここは彼の選挙区であることを呼び起こす。思わず「日本の首相になることを考える前に故郷の町の振興を考えたらどうか」と言いたくなりました。海鮮居酒屋で一品350円のしめ鯖などを肴に2合の酒を飲んだ後、中華レストランで食事。そこのマスターに声をかけると、彼も中国人であり、しかも上海人であることが分かりました。鳥取での収穫は上海人との遭遇、中国語での会話が楽しめたことが最大の収穫かも。

 翌日は山陰本線日本海海岸線を北上し、2時間かけて兵庫県の海寄りの町、志賀直哉の小説で有名な城崎温泉に行き、投宿しました。ここで何より驚いたのは外国人が大勢来ており、特に西洋人が目立ったこと。ロンリープラネットなどの外国語ガイドブックで紹介されているのか。街並みがきれいであり、このシーズンは特に川沿いに咲いている、ライトアップされた満開の桜並木が見事でした。

 街中に4,5カ所の共同風呂があり、そのうち外に滝が落ちる景色が見られる「御所の湯」は圧巻でした。温泉地の一番奥にある「鴻の湯」も庭園湯と銘打っているだけに箱庭の中の温泉風で、すばらしい。入れ墨をした中年の西洋人がいたので、声をかけると英国人で、リバプール辺りから来ているとのこと。日本の温泉はいいとベタ褒めしていました。小生は「英国にもバースという温泉発祥の地があるのでは」と振ったのですが、あまり関心を示さず、サッカーの話をし出しました。

 ということで、久しぶりに自分の思い通りに設計したルートを一人で歩き、切符、宿の手配も自分でやりました。大変でしたが、充実感があり、本当に「旅行でなく旅」を堪能した思いです。

 上の写真は、「砂の男」というか「砂丘の老人」。下の方は、鳥取駅前の店舗テナント募集のビル。県庁所在地の駅前としては寂しい。

プーチンはスターリン以上の悪辣指導者だ

 昨日、米国のメジャーリーグに続いて日本のプロ野球も開幕しました。ああ、球春到来、もう寒さとお別れだと思うと気持ちも晴れ晴れします。ロサンゼルスの球場も日本のプロ野球各球場も、開幕戦で天気が良かったせいか、大入り満員の様子。小生の家は横浜スタジアムから直線で1キロほどしか離れていないので、鳴り物や歓声が聞こえるほどでした。という賑わいを見るにつけ、何か別の感情も湧いてきます。地球のどこかではまだ戦争しているんだよなー、われわれだけこんな”平和”に酔いしれていていいのか、との感情です。

 関東地方では今日すでに20度を超す気温になっているけど、ウクライナではまだ零度前後でしょう。そんな寒さの中で、塹壕を掘って野ネズミやゴキブリと一緒にロシアのさらなる侵略、さらには領土奪還に備えている。神様はなんとなんとむごい試練を与えるのかと思えてなりません。だからといって、「はい分かりました、ロシア様に降伏します、どうぞ好き勝手にしてください」とも言えない。キーウ郊外ブチャの虐殺を見ても分かる通り、女性はレイプされ、物は強奪され、男は殺される。古来侵略とはそういうものです。だから、「はい、はい」と言って銃を置くことはできないのです。

 少なくとも、独立した主権国であれば、他国の侵略に対しては最大限抵抗し、反撃しなければならない。それは権利であり、義務です。侵略者には相応の対価を与えなくてはならないのです。自国を守らずして逃げることは許されない。ウクライナ側はすでに3万人以上戦死者を出していると発表していますが、ロシアは何も発表していない。英米の調査機関などでは、これまでに30万人近い死傷者が出て、死者は10万人以上だとしています。かつてアフガニスタンに派兵したときには5万人くらいの戦死者だったそうですから、今回の戦争は第2次大戦後、最大の犠牲者を出しています。

 それでも、プーチンは戦争を止める気配がない。いや、逆にこれだけの犠牲者を出した以上、へたに止められない。”成果”なしに戦いを止めれば自らの政治生命を失うからです。本心では止めたくとも止められないんでしょうね。悲しい境遇です。彼は国際刑事裁判所ICC)から逮捕状が出されているので、もうICC加盟国へは出られない。彼自身はこの先どういう未来、将来像を考えているんだろう。最早客観的にウクライナ全土を支配することは不可能。それでもその野望を捨て切れないとするなら、死ぬまで戦い続けるしかないのです。

 ロシアは情報コントロールされ、正常なメディアがないので、死傷者を含めてウクライナ戦争の実態が国民に伝わらない。これも悲しい現実です。最近行われていた大統領選挙だってばかげている。まともな情報がないところで有権者はどういう判断ができるというのか。これは日本の東条内閣のときの1942年に行われ、戦争反対者の候補を認めない翼賛選挙に匹敵します。対立すべき候補者の手足を縛っておいて、選挙に勝った勝ったとはしゃぐ愚かしさはまさに噴飯ものです。

 それどころか、プーチンは自分に逆らう政治家を極寒の刑務所や外国で虐殺してしまうのですから、さらに質が悪い。スターリン以上の悪辣ぶりです。あの偉大な文学や音楽を生んだロシア人の本質ってそんなに醜かったのか。トルストイドストエフスキーチャイコフスキーが今に生きていたら、どう言うのか。でも、よくよく見ると、あのロシア正教のトップの司祭ですらいつもプーチンの隣にいてウクライナへの侵略戦争に賛成しているのですから、ロシア人はもともと好戦的な国民かも知れません。それは隣国であるわれわれにとっては悲しい現実です。

 上の写真は小生自宅近くの野毛山動物園の入り口。下の方は、横浜には他に金沢動物園ズーラシアがあるよという宣伝看板。

「顔は履歴書」と言うが、怪しさは顔に出るのか

 今日朝(日本時間)に行われた大谷翔平の会見内容を見る限り、どうやら巨額賭博事件は元通訳の水原一平の”単独犯”説が濃厚になりました。水原がばくち打ちだったこと、巨額の借金があったことも知らなかったとのこと。つまり、大谷は徹頭徹尾被害者であったようです。それでも、何故水原が大谷の預金口座にアクセスできたのかという点については明らかにされなかったので、まだ隔靴搔痒の感があります。いずれにしてもスポーツ界の大ヒーロー大谷翔平がばくちに関わっていなかったと明言したことで、ファンは安心したと思います。

 もし、大谷の言う通りなら、水原は大谷の金を詐取、あるいは窃盗したことになります。日本ハム時代に知り合い、エンジェルス、ドジャーズとずっと二人三脚で歩んできて濃密な関係を築いてきた人に裏切られたわけですから、大谷にとっては青天の霹靂。街を歩いていてある日突然天上から物が落ちてきて当たるような災難で、ショックと言うより虚脱感さえが出てしまうのではないでしょうか。お察しいたします。本当に、シーズン早々のこの騒動が今年の彼の活躍を削ぐことがないよう祈るばかりです。

 ところで、コーヒー店チェーン会社のオーナーで元参院議員のM氏が水原巨額賭博事件が発覚したあと、自身のX(旧ツイッター)でこうツイートしていました。「最も身近にいる人を信用し過ぎるとよく起こること。マスコミは水原通訳を絶賛していたが、私は顔つきから心配していた。側近に何度も裏切られた経験があったから」と。実は、小生の内人も最近、「水原が大谷の通訳で出てきたころから、顔つき、目つきが怪しいと感じていた」と言っています。ちょっと後出しじゃんけん風の後日談ですが…。

 でも、「そう言われてみれば、怪しいと思っていた」という人は少なくないのでは。実は小生もうすうす感じていたのですが、水原の目はいつも正面を向くことなく、なんとなくおどおどした感じがありました。天下の大谷の通訳兼秘書みたいな存在であれば、もっと自信たっぷりな態度を示していいと思うけど、意外にそんな感じがなかったのです。まあ、見方によっては、それは水原氏の謙虚さなんだろうと思った人もいたでしょう。でも目は口ほどにものを言うということわざもあります。

 M氏の言う「顔つき」についてさらに深掘りします。世間に「男の顔は履歴書」という言い方があります。それなりに経験を積んだ人は、相対した人間が生活苦にあったか裕福に育ったかだけでなく、苦労したかしなかったか、教養があるかないか-などを一見で見抜くことができると言います。M氏のように経営上で再三苦杯をなめた人は特にそうで、ある程度詐欺師的な人間、怪しい人をパターン化して類別していることかと思います。それはどこの部分、どういう態度ということでなく、直観で感じることなんでしょうね。

 小生も記者時代、取材相手の話を信用していいのかどうか見極めることに苦労しました。信用して相手の言をそのまま報じれば、誤報になってしまうこともあるので。で、長年の経験からなんとなく「この人、ちょっと怪しいな」という印象は持てるようになりました。といってもやはりだまされることはあります。記者を辞めてからの話ですが、小生は日中企業合弁の仲介した経験があります。中国側企業の社長(総経理)は上海郊外の田舎の人であり、朴訥さに好感が持てたので、日本側企業の社長に強く合弁を勧めました。しかし、結果は中国側企業と社長に誠意のなさが見られ、合弁はうまくいきませんでした。

 水原はまだ40歳直前の年齢。それまでの”人生経験”が顔に出るのかどうかは分かりません。でも、M氏はにはそう見えたんでしょうね。レッドソックスにいた岡島秀樹投手はかつて水原を通訳として雇おうとして止めた経緯があるとか。彼は事前に水原の周辺を調べたのか、それとも直観で怪しいと見抜いたのか分かりませんが…。そんな人間がどうして天下の大谷のところに行ったか。いずれにしても、本当に辛く寂しい話ですが、一般論として他人を100%信用することはできないのかも知れません。ちょっと俯瞰してみるとか、斜めに見るとかの反復認識も必要なことかと思います。

 上の写真は、横浜・伊勢佐木町、野毛で見られる壁画。この界隈は結構壁画が多い。

人生は暇つぶしと言っても、ばくちでいいのか

 イヤー、驚きました。いつも最初にこのフレーズを使っているけど、今回は本当に驚きました。それは、大谷翔平の通訳の水原一平が違法賭博に関与してことでドジャーズから解雇されたこと。昨日朝のワイドショーを見ていたら、「水原解雇」との速報が入ったのですが、最初はどういう意味か分かりませんでした。奥ゆかしい顔をし、かいがいしく大谷の面倒を見ていましたので、なかなか好青年だなと思っていたのですが、陰ではとんでもないばくち打ちだったんですね。恐れ入りました。

 彼は、いつも大谷と一緒にいることで、自分が7億ドルの契約金をもらったと錯覚してしまったのか。こういう普段一緒にいる人間と自分を混同してしまう人は、小生が以前いたメディアの世界でも見られました。政治部の記者連中です。いつも政治家を取材対象とし、国会議員と対等な感じで話しているために、自分も偉くなったように錯覚し、服装もストライプ入りの派手な三つ揃いの背広を着たり、やたら傲慢に天下国家を論じたり、しゃべり方も上から目線で話したりする人がいました。われわれ社会部育ちの記者はもともと地べたをはいつくばって取材しているので、彼らの姿勢には違和感を持ちました。

 大谷のドジャーズ契約金7億ドルというと、今日のレートの1ドル151円で換算すると1057億円の勘定。1ドル150円なら1050億円。つまり早い話が、対ドル1円安で7億円の差益を生んでるんです。大谷の口座から水原が無断借用していた金は450万ドルというから、日本円で6億8000万円弱。大谷にしてみれば、日本円が一円安くなれば、そのくらいで十分補える額なんです。でも、大谷の今の生活は米国であり、ドルで生活しているわけですから日本円は関係ない。水原が詐取した金も米ドルだから、為替によって変化があるわけではないんですね。

 小生はばくちが嫌いなので、ばくちにのめり込む心境が分かりません。散歩でよくパチンコ屋のトイレを借りることがありますが、その時に昼間っから、熱心に台に向かっている人を見かけると、うんざりします。と同時に、その人が儲けているか、損しているかに関係なく、人生の貴重な時間を無駄にしているなーとある種の軽蔑も感じます。こういっては何ですが、たとえ玉を出し続けていても、何時間も台だけを見て他に何もできない状態って本当に幸せですか、小生はもったいない感じがして仕方がないです。

 でも、冷静に考えれば、また別の視点もあるのかも。今はタイに住む、香港時代の友人がこんなことを言っていました。「人生は生まれてから死ぬまでの膨大な暇つぶしだから」。という観点に立てば、パチンコ台で時間をつぶすのもまた良き人生の在り様、選択なのかも知れません。玉が出続けていれば、とりわけ幸せな気分に浸れ、彼らなりに充実感を味わっているのかも知れません。

 逆に、小生も「お前は有意義に過ごしているのか」と問われれば、返答に困ります。本を読んだり、文章を書いていることがそれほど偉いことか。旅行しているのと競馬に夢中になるのにどれだけの違いがあるというのか。確かに、読書が偉くてパチンコ打ちが人生の無駄などと決めつけることも、ちょっと上から目線かも知れません。でも、小生は一応知識人でいたいと思っているので、やはりパチンコをするより読書や執筆をしている方がよっぽどいいと固く信じています。

 水原一平君は大谷の通訳兼秘書みたいな形で有名になり、それで彼自身の世間的な評価を高めました。今、日本人で彼を知らない人がいないくらいの有名人。普通なら、大谷の通訳を卒業しても、その後日本企業などから多くのオファーがあるだろうと予測できます。でも、今回の事件でミソをつけてしまいました。今後は多くが「何、あの水原か」とそっぽを向いてしまうでしょうから、彼の今後のバイリンガル人生にも大きな汚点を残してしまいました。

 そのプラス、マイナスは天と地ほどの開きがあります。彼の今後の人生を考えるときに、同情してあまりあります。でも世の中って、好事魔多し、幸せな人生の中に落とし穴が潜んでいることもまた真実。小生などはもうほとんど人生が終わっている人間だからそんなに心配していませんが、若者はその落とし穴に気を付けなければならない。ということを今回の水原事件は教えてくれました。

 上の写真は、薄暮のみなとみらい地区の風景。大岡川、横浜港沿いの散歩は気分がいい。

大谷は結婚でハングリー精神失わないで欲しい

 大谷翔平が先月末に結婚を発表したのですが、もったいぶったのか新妻の名前を言わなかったので、メディアは取材に走り回った様子。それで、ユーチューブなどでは早い段階で元全日本級のバスケット選手である「田中真美子さん」という名前が出ていました。そしてこのほど、ドジャーズが韓国でパドレスとのメジャー公式戦をするためにソウルに向かうチャーター機前で大谷と女性の2人が写った写真が球団サイトで公開され、「ootani and his wife」というキャプションが付いたことで正式に相手が特定されました。メディアの取材通りの人でした。

 米国、いやドジャーズのスタイルなんでしょうか、太平洋を越えた先の公式戦会場に家族同伴で行くというのは実に驚きです。日本ではキャンプ地や地方遠征の時などにひそかに妻や恋人を呼び寄せるケースはあるみたいですが、球団丸ごとで面倒を見るというケースはないでしょう。粋な計らいというべきか、昔のシーズン後の親善試合のために行くのならともかく、シーズン初めの真剣勝負に向かうのになんと優雅なことか。これでは選手は旅行気分になってしまうのではないかと心配してしまいます。

 で、20日パドレスとの公式戦を前に、ドジャーズ韓国プロ野球チームのキウム・ヒーローズとオープン試合をしました。レベルの差があるので、結果はもちろんドジャーズの勝利でしたが、われわれが期待した大谷は1回と3回の2打席に登場して2三振。精彩を欠くことこの上なく、3打席目にはピンチヒッターが出されてしまいました。日曜日の昼の放送なので、多くの日本人が茶の間で見ていたと思います。であるなら、ヒット、ホームランは要らないまでも、せめてフェアゾーンにボールを転がせよと言いたくなりました。

 生真面目は大谷には申し訳ない発言ですが、妻同伴なのでちょっと新婚旅行気分になっていないか。君は公式戦のために韓国に来ているんだぞ、それを忘れたのかと言いたくなりました。こう言っては下世話になりますが、新妻と同部屋なら当然することはするでしょうから、体力に影響を与えたのではないか。彼は昨年、カージナルスと対戦するため、セントルイスに宿泊した際、WBCでのチームメイト、ラーズ・ヌートバーから食事の誘いがあったのに翌日の試合に備えて断ったほど。それだけ彼はもともと禁欲主義者、石部金吉的人物なのです。再度言いたいが、公式戦を控えて妻同伴はいかがなものか。

 でも、新妻の田中真美子さんは映像で見る限り、とてもしとやかな色白美人であり、一見筋骨隆々のスポーツウーマンには見えない。ただ、背が高いのでそうも感じられないこともないですが…。うつむき加減に夫の後ろを歩いている姿は、遠慮深い印象を与えます。こう言ってはまた差し障りがあるかも知れませんが、古き良き日本人女性の在り様を思わせ、好感が持てます。なるほどこれが人格者の大谷が選んだ女性なのか、さもありなんと日本人のだれもが思ったことでしょう。

 残念ながら、大谷は今日の試合でいきなり2三振してしまったので、口さがない連中からは悪口も出てきそうです。「大谷は結婚によって野球への探求心、ハングリー精神を失ったのではないか」あるいは極端に「妻は意外にも下げマンじゃないのか」などなど。一試合だけでそう見るのは僭越の極みなのですが、期待感が高いだけに、そう見られても仕方がない。日本人のほとんどが大谷の活躍を祈っているのですから、オープン戦2試合目、さらにはパドレスとの公式戦では必ず良い結果を残して欲しい。

 上の写真は、横浜の野毛山公園で咲いている早咲きの桜。

女性が家庭で子育てするのも立派な社会貢献だ

 日経新聞の国際面を見ていたら、面白いベタ記事が載っていました。アイルランド政府は、「女性は家庭を優先すべきだ」という憲法上の条文を削除するため、国民に憲法改正案を提示、国民投票に付したのです。それで結果は、反対多数で同条文の維持が決まったというのです。昨今は、世界的に女性の社会進出が言われているため、政府はこのトレンドを後押しするため、この条文はまずいとしての”修正動議”だったようですが、国民は冷静に「女性は家庭優先」という文章に固執したもようです。

 バラッカー首相は「多くの人に賛成してもらうよう説得するのがわれわれ(内閣)の責任だった。明らかに失敗した」と語ったという。この記事を読む限り、首相は条文の削除は当然多くの国民が支持してくれるものと考えていたフシが感じられます。でも、アイルランド国民は冷静にこの文章に向き合ったのであって、小生は、首相が言うように説得不足の結果ではないような気がします。

 この記事で思い出すのは、20年くらい前、小生が母校の東京外国語大学で「現代中国論」の講義を受け持っていた時のこと。脱線して女性の社会進出の話をしたのですが、そこで「女性は子供を産む性で、男性は代替できない。子供は生後しばらくの間、母性の温かさを必要とするのだから、女性の社会進出は否定しないが、その他の選択肢として子供を産んで、その子をそのまま立派に育てるというのも立派な社会貢献ではないか」と話しました。当時、小生は、女性の社会進出が進むと、少子化に拍車がかかるという”危機意識”を持っていたこともありました。

 すると、授業が終わった後、一人の女子学生が小生のところに来て、「先生の考え方は女性差別ではないか」と言うのです。彼女はすでに大企業に就職が決まり、卒業後の社会進出を楽しみにしていたようで、へんな教師につまらないいちゃもんを付けられたと思ったのかも知れません。そこで食堂に誘い、メシを食べながら、るる小生の考え方を説明しました。女性の社会進出は当然であり、また必然な流れでもあります。大いに賛成です。でも、子育てのために家庭に入る選択をした人がいてもいい、劣っているとか、落伍者などと見る必要はない。それはそれで立派な生き方ではないかと彼女に説明しました。

 大谷翔平の母親は体育会系で、バドミントンの国体選手になるほどのスポーツウーマンだったらしいのですが、自らの選手生活をあきらめて子供の養育に集中したもよう。それで息子はあれだけ立派な人間となりました。小生はかつての記者活動の中で、子育てを優先するために官庁を辞めた女性も承知しています。ものすごい能力があるのにもったいない、能力を無駄にするなと非難する人もいるでしょうが、小生はそうは思わない。

 自身は子供がいないので良く分かりませんが、周囲を見渡し、さまざまな事情を見聞きする限り、やはり子育ては大変な”事業”であり、生半可ではできないものだと感じています。優秀な女性が集中的に子育てに専念し、そしてまた次世代の優秀な人間を作るということもあり得る生き方ではないのか。親との触れ合いが深く、良く育ってほしいという思いが伝われば、その分子供は立派になると思う。小生は件(くだん)の女子学生にそういう趣旨を強調したかったのです。

 「女性は家庭優先」に固執したアイルランド国民の思いはどうだったのか。彼らだって女性の社会進出を否定するわけじゃないでしょう。要は、小生の考えに近く、一義的には子育てを考えるべきではないのか、子育てでは母親しかできないことがあるのだから、という思いを強調したくて憲法条文に入れたのだと思います。それにしても、すごい条文です。日本国でこんな条文を憲法に入れるとなったら、どのくらいの反発があるか分からないでしょうね。

 上の写真は、みなとみらい地区の赤レンガ倉庫ビル。下の方は、赤レンガ前から出航する湾内クルーズ船。

メッシの不出場に対する香港、中国の怒りは異常

 世の中、せこいというかあきれるというか、そんな話が数多くありますが、今回取り上げる話もそのような部類です。ちょっと旧聞に属しますが、あの有名なアルゼンチン出身のサッカー選手、リオネル・メッシの話。米サッカーチーム「インテル・マイアミ」の一員として香港に来て親善試合を行うというので、大陸からのファンも含めて大勢がスタジアムに押し掛けました。大陸でもメッシファンは多い。ところが、メッシは体調不良を理由に一回もピッチに立たなかったのです。で、観客は「メッシを見に来たのに、試合に出ないとは何事か」とばかりに入場料金の返還を求めたのです。

 メッシ一行は香港のあと日本に来ました。ヴィッセル神戸と試合をしたのですが、この時は試合後半の15分程度というわずかな時間に途中出場し、華麗なドリブルの足さばきを見せてくれました。メッシは実際に香港では足を痛めていて試合に出られる状態ではなかったようですが、日本に来た時には幾分回復したのかも。だが、香港、中国のサッカーサッカーファン、いやすべての国民が日本でのゲーム出場を見て、「香港では出ないのに、なぜ日本で出るのか。香港、中国をばかにしている」とさらに怒りを募らせたのです。

 まあ、メッシにしたら、体調の問題で、別段香港、中国と日本を差別するつもりなどなかったのでしょうが、彼らは許してくれませんでした。大国の中国をソデにして「小国の日本」に迎合するとは何事かという思いだったのでしょう。怒りはメッシ個人に対してだけでなく、アルゼンチン全体に向けられ、中国サッカー協会は、中国国内で3月に行われるべきアルゼンチンとの国際親善試合をキャンセルしてしまったのです。

 これはサッカー協会だけの判断でなく、中国指導部全体の意向のようです。なんと度量の狭いことか。中国の怒りにおののいたのか、インテル・マイアミは香港の試合の入場料金払い戻しに応じたとか。出場が期待されている人気選手が体調や何か一身上の都合で出られなくなることは良くある話です。そんな時にいちいち文句をつけて「入場料返せ」と言うのは度を越した要求だと思います。米メジャーでドジャーズ戦を見に行ってたまたま大谷が体調不良で出られなくなったら、同じような要求があるのでしょうか。まずありえないでしょう。

 ついでに、せこい話と言えば、ちょっと下世話になりますが、社会の裏事情に詳しい人からこのほど、こんな話を聞きました。最近、いわゆる風俗の店では酔っぱらった客をお断りしているとのこと。なぜかと言えば、酔っ払い客で理不尽な要求をする人がいるからだそうです。酔っぱらうと、男は概して”現場”において肝心の物が機能しないケースが多い。それでも女性と談笑して帰ればいいものを、逆切れする奴もいる。女性の”サービス不足”だとして、サービス料金の返還を求めるというのです。

 これを聞いて小生はあきれました。自らの”能力不足”を他人のせいにするのは世間ではよくあることですが、そんな場所でもそんな主張、要求があるのかい。理不尽極まりないし、随分せこい性分だなと思いました。メッシの出ないサッカー試合に怒るというのとちょっと違う感じもありますが、状況に応じてその現実を受け入れられないという点では似たところがあります。いずれにしても、小国のアルゼンチン、その国の選手にコケにされたということで、大国中国、国民のメッシとアルゼンチンへの怒りは収まりそうにありません。狭量の国や人につける薬はないのかな。

 上の写真は、薄暮のみなとみらい地区。大岡川沿いの散歩は楽しい。