つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

拘束された保釣人士は懐かしい顔

 今回、尖閣諸島に上陸した香港保釣人士の顔をテレビで見たところ、懐かしい顔が散見されました。というのは、彼らは、小生が香港にいた時代にも、再三地元のテレビや新聞に登場した有名人。反中国の民主化デモのときには、先頭に立って派手なパフォーマンスを繰り広げていた人たちだったのです。反中国の民主化人士がこともあろうに、香港の民主主義が危ないというこの非常時に保釣行動かよとあきれてしまったのですが、、。
 ある筋から今回、拘束された保釣人士のリストをいただきました。それを見て「ああ」と名前も思い出しました。なんと懐かしい名。背が低く小太りの男は曽健成といって結構民主化運動でも活躍した闘士であり、返還期には立法会議員にもなった男で、区会議員も務めていました。この男は小生が香港にいたころから、保釣にも熱心でした。背が高くひげを生やした男は古思尭といって、これも民主化運動にはかならず登場する有名人。もう一人、長毛とあだ名される長い髪を束ねた梁梁雄という男もいますが、彼は今回、船には乗っておらず、香港で出迎え側に回っていました。
 三人はいわゆる職業活動家であり、派手なパフォーマンスをすることで生活の糧を得ている人たちです。小生も何回かインタビューをしたことがある長毛は現在、立法会議員であり、公的な立場にあり、きちんとした報酬を得ているので保釣船には乗っていませんでした。ですが、残る2人はまだまだ純粋に職業活動家であり、生活するためにパフォーマンスが必要です。それにしても、小生が香港にいた10数年前のときと比べて、彼らはすでに白髪であり、随分歳を取ってしまったなと感じました。その分、この歳でもまだこんなことをしているのだと半ばあきれ、一抹のさみしさを感じました。
 香港ではこうした民主化運動をしている人が結構、保釣運動にもかかわっています。でも、香港では今、中国化が進み、自由が徐々に侵されようとしています。特に問題になっているのは、大陸の意向を受けて新しく作られた小学校向けの教科書。ここには「中国共産党は進歩的で無私であり、団結する執政政党」と礼賛する一方、米国の民主主義について「政党間の争いを引き起こし、国民の生活に災いを与えるもの」と否定的に書かれています。香港の教育界はこんな教科書を使われたんでは「洗脳教育」になると、一般市民を巻き込んで大反対しており、再三デモを敢行しています。
 今、香港人がすべきは一国二制度の二制度を盾に中国の影響力を排除することであり、尖閣諸島へ船を出すことではないはずです。ですが、そこは職業活動家の悲哀で、保釣運動が大陸の金持ちから金が出ていることを知りながら、しかも今の保釣行動は教科書問題の目くらましであることを知りながら、生活のために尖閣まで行ったのでしょう。
 香港で反中国の民主化運動をしている人が保釣運動にも熱心なのは、民主化運動は反共産党であるけれども、決して反愛国ではないということを訴えるための一手段だと言われていますが、それにしても防衛する側の日本、特に海上保安庁はたまったものではありません。
 ただ、小生はちょっと安心しました。尖閣に来る保釣人士があの香港の職業活動家ならば、目的は彼ら自身の生活のためであるのですから、何回来てもいいでしょう。むしろ、来るたびに警察官を魚釣島に待機させ、そのまま滞在時間を長くして同島上陸を既成事実化してしまえばいいのです。