つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

優しくなければ生きる資格はない

 今日未明にトランプ次期大統領が当選後初めての記者会見に臨みました。これまで彼はツイッターで自分の声を発進し、世界を混乱させてきました。それだけに、相手のいる記者会見ではどう受け答えをするのか、ツイッター発信内容とは違ってくるのか、などなど非常に注目していました。が、結果は、唖然とするばかりでした。
 それにしてもトランプ氏は、ツイッター発信というなんとうまい意思伝達方法を考え着いたものか。ツイッターは、質疑応答がないので論旨を整理したり、厳しい質問に対応したりする必要もないし、自分の言いたいことだけワンフレーズで言える。ある意味、中国共産党の機関紙のように一方的なプロパガンダ的機能を持っているので、独裁的な権力者には非常に便利なツールです。
 初めてのトランプ記者会見は小生も気にかけていましたので、きょう早朝に起きてチェックしました。で、その中身を見ると、これまで主張した内容とほとんど変わらず、いわゆるアメリカ・ファースト主義のオンパレード。貿易不均衡問題では、中国やメキシコとともに日本も名指しし、うんざりしました。彼は、メキシコに工場を造ろうとするトヨタのことを言っているのか、それとももっと広い経済関係を言っているのか。
 また、気に入らないメディアや質問には応じず、完全封殺です。これではツイッターとまったく同じ。特に、今や世界的メディアと言ってもいいくらいのCNNニュースに対しては露骨に敵意を見せ、その素振りはみっともないくらい。大統領に就任してもこんな姿勢を続けるのか、こんな人が世界をリードする米国の大統領になってしまったのかと思うと、うすら寒い思いがしました。
 30年、メディアの記者をしてきた小生の経験から言えば、記者を敵に回して長らえた指導者はいません。独裁国家の例はいざ知らず、民主主義国家であれば、記者は絶えず一般大衆の代弁者という立場にあるので、記者を敵にすることは大衆を敵にすることであり、大衆の支持を必ず失います。また、”敵”になった記者は必至にその指導者の荒さがしを始めることでしょう。
 そうなると、指導者の末路はどうなるか。かつてのニクソン大統領のように、スキャンダルをえぐられ、辞任に追い込まれる可能性が大。あるいは、最悪の場合、民衆から抹殺される(暗殺も含めて)恐れもなきにしもあらず。セウォル号沈没事故の時に7時間の空白を作り、それについて何も答えなかった朴槿恵大統領が世間から厳しく指弾されたことは記憶に新しいところです。
 トランプの品のなさに比べて、ゴールデングローブ賞授賞式で演説した女優メリル・ストリープのなんと素晴らしいことか。彼女はトランプが身障者の記者を揶揄したことを取り上げ、「権力者が身障者の真似をして侮辱するようなことをしてはならない」とたしなめました。もともと同世代のストリープは大好きな女優でしたが、この発言を聞いて小生はますます彼女が好きになってしまいました。
 米小説家レイモンド・チャンドラーは小説の主人公に「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きる資格がない」と言わせています。特に権力者であれば、他への思いやり、優しさが人一倍必要だと思うのです。

 上の写真は、湯河原町中にある温泉かけ流しの場所。友人は足湯の場と間違えて、足を入れて寛いでいたところ、近所の人に怒られたと言っていました。