つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

藤井棋聖殺害予告の動機が分からない

 何が分からないと言っても、これほど分からないこともない。というのは、将棋界の至宝、藤井聡太棋聖に殺害予告を出した人間の動機です。藤井君は若くして一定の地位を築いたにもかかわらず、インタビューなどを聴いても驕るところなど少しもない、実に好青年(好少年?)であり、他人に不快感を与えるところなどまったくありません。それが普通の人の見方です。それなのに、どうして殺人の対象になりうるのか、どうしてそんなことを考えるのか。

 日本将棋連盟のウェブサイトに「対局を止めさせなければ、殺害する」という脅し文句が書き込まれたのです。そこで、警視庁が威力業務妨害の容疑で捜査したところ、犯人は北海道釧路市に住む警備会社員、畠山拓也(43)と分かりました。その動機なのですが、「テレビを見て、態度にイラッとした」と供述しています。警察にしろ、将棋連盟にしろ、脅迫があっても犯人か99・9%実際に犯行に及ぶとは思っていなかったでしょう。でも、藤井君は今、話題の有名人。よくある建物の爆破予告と同じく、万一のことを考えて、将棋連盟は厳戒態勢を敷いたようです。

 まず、犯人が言っている「態度にイラッとした」というのがまったく分かりません。繰り返しになるけど、藤井君の発言のどこに不満が生じ、殺したいという感情が醸成されるのか。藤井君はインタビューで、対局の相手を思いやり、勝利に対して手放しで喜ぶような素振りを見せず、謙虚に受け答えをしていました。17歳、18歳の子供にしては実に立派な態度です。藤井君の態度を見ていらついたとしたら、屈折した性格の人間であるとしか言いようがありません。

 犯人は43歳のサラリーマンであり、分別盛りの大人。であれば、殺害予告という行動が一銭にもならないくたびれもうけの骨折り損、捕まれば個人の評判を落とすだけのバカげたことだと分からない年齢でもないでしょう。単なる人騒がせにしても、あまりにも無邪気過ぎます。実際に犯人は逮捕され、名前まで公表され、恥を天下にさらしてしまいました。狭い町ですから、今後、多くの人が会えば必ず「この男か、藤井棋聖を脅した奴は」と指摘します。この人はもう釧路では生きていけないでしょう。

 犯人の動機の話ですが、心理を分析するに、恐らく嫉妬心でもあったのか。天賦に恵まれ、若くして脚光を浴びる藤井君をうらやましく思ったのか。でも、天才をうらやんでもしょうがないでしょう。プロ野球の長嶋、王やイチローを「この野郎」と思ってもせんないことです。人はさまざまな個性を持ち、さまざまな人生を送るのです。それに、犯人にとって藤井君は歳の離れた弟か子供みたいな年齢。同年齢ならば、嫉妬心が生まれてもまだ理解できますが、歳の離れた人間がなぜおおらかな気持ちで若者の活躍を祝福できなかったのでしょうか。

 藤井君脅迫事件を取り上げましたが、ほかにも世の中、一銭にもならないのに、結構熱心にバカげた行動、犯罪に”取り組んでいる”人たちが多いんですね。例えば、夜中にどこぞの駐車場をうろつき回り、他人の車のタイヤをナイフで切り裂く奴。高速道路であおり運転をする奴、オートバイやゴミ置き場に放火する奴。「こいつが新型コロナウイルスの感染者だ。この男が街にウイルスを持ち込んでおり、けしからん」みたいな文書を作って、配布している奴。”自粛警察”の一種なんでしょうが、匿名にしている分、面前で指摘する自粛警察よりかなり陰湿な感じがします。

 人はなぜ自分の得にならない、いやむしろ見つかれば恥になることに、こうも熱心になれるのか。まあ、人間は損得だけで行動するものではないと言われますが、そうであるなら、なるべく他人に感謝されるような行動をした方が、本人にとってよほど後味がいいし、楽しいと思うのですが、、。このいじけた行動は、コロナ第2波蔓延で自粛生活を強いられ、外出不能になった人たちのフラストレーションが増幅したせいかも知れません。憎いのはやはりコロナウイルスですか。

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 上の写真は、横浜野毛のある飲み屋の前にあるカッパ。