つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

藤井聡太君、高校中退とはカッコ良すぎる

 将棋界に現れた大天才、藤井聡太君はその話しぶり、落ち着きぶりからして、人間的にも只者ではないなと思っていましたが、今回、高校を中途退学したというニュースを聞いて、改めてその感を強くしました。3月には高校を卒業できるというのに、わざわざその2カ月前に退学なんて普通はしません。これは、将来の人生を読み切った彼の断固たる決断。「僕は将棋指しという”職人”の世界で生きていくんだ」という強靭な意志の表示なんでしょうね。

 最近、将棋界にも結構大学卒が多いようです。これはなんか大相撲界と似たところがあります。日大とか、東京農大とか、日体大とかの幕内の対戦が組まれます。でも、よくよく考えれば、大卒で横綱になったのは輪島くらいで、ほとんどが中卒です。相撲も将棋も実力の世界、強いことがすなわち存在の証明なんです。藤井君ほどの実力があれば、一生涯、将棋界でメシが食っていける、いや最高位にいられるわけですから、学歴が問われることはない。要は、将棋の職人に学歴は必要ないんですね。

 小生は大学で語学を教えていた時、「余計なことかも知れないが、君たち大学の卒業証書だけではメシは食えないぞ。国家資格を取るか、手に職をつけることが大事。コンピューターを熟知しているとか、楽器がうまい、あるスポーツに秀でている、ダンスがうまい、料理ができる、手品がうまい、けん玉がうまい、何でもいいから、普通の人より一段と優れた特技を身に着けることだ」と学生に話していました。残念ながら、今の多くの大学教育、特に文科系では、カリキュラムからして一般的に特技が身につくことはありません。

 ドイツなどでは、ある程度の歳になると、大学コースと職業教育コースの2つの方向に分かれ、職業教育コースに行く者には一定の技術、技能を徹底的に仕込む、つまり職人の養成をするんですね。職人であれば、それで一生涯生計が成り立つし、技能を高めて親方、マイスターとなれば、それだけ世間で尊敬される立場になれる。小生は、そういう社会の方が健全だと思います。何千人もいる経済学部、法学部、商学部などを卒業してサラリーマンになるよりも、より地に足が着いた人生設計ができると思います。

 サラリーマンは企業の業績次第で首切りもあるし、企業自体の倒産もある。いつ露頭に迷うかどうか知れたものではないんです。その点、手に職を持っていれば、たとい企業の中にいても心強いと思います。ではお前はどうかと問われれば、恥ずかしながら他人に誇れる特技はありません。わずかに、1970年前後に当時としては珍しく中国語などを学んだことから何とか企業で生きてきて、辞めてからも語学教師をすることができました。年代が幸いしましたが、この程度では本来ダメでしょう。人生をやり直せるとしたら、もっと徹底した”手の職”を身に着けたかったなと、今さらながら思います。

 それにしても、藤井聡太君はカッコ良すぎます。21世紀に入ってから、彼に限らず、次々と素晴らしい日本人が誕生しているように思います。アウトゴーイングしていくわれわれの年代からすると、頼もしい限りです。

 上の写真は、横浜・日ノ出町駅近くの郵便局前にあるモニュメント。