つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

自民党内で反二階の権力抗争始まった

 前回も書いたので、今回は政治の話を離れて、スポーツ、芸能(?)関係の話を取り上げようと思ったのですが、ネットニュースでまたまた面白い話題を見つけてしまったので、論評したくなりました。それは、文部科学相など複数回大臣経験のある岸田派の林芳正議員が参院から鞍替えし、次期総選挙で衆院山口3区から立候補するという話があるというのです。この選挙区は、二階派自民党河村建夫氏の地盤であり、林氏が立候補ならもちろん無所属となるのですが、いずれにしても自民党員同士の戦いに変わりはありません。

 林氏は将来、岸田派を引き継ぎ、総裁選の候補者となり、総理を目指すとの思惑を持っています。参院議員でも国会議員であれば、総理候補にはなれるのですが、歴史的に参院出身の総理はいない。で、林氏にとってはかねてから衆院に移りたいとの意向を示し、模索していました。でも、この選挙区には、やはり文科相内閣官房長官の要職を歴任した河村氏がいる。彼もまだ引退する気はなく、受けて立つ構えです。

 林氏が次の総選挙に出る背景には、岸田派と二階派の確執があります。河井克行元法相の妻案里女史(夫妻とも二階派)が前回参院選で広島選挙区(定数2議席)から出馬、現職の岸田派議員である溝手顕正氏の落選を引き起こしました。二階氏は幹事長の立場を利用して1億5000万円という多額の選挙資金を用意、自民2議席獲得は無理と承知しながら案里女史を強引に押し込んだと言われており、岸田派には遺恨が残りました。つまり、「広島の仇は隣の山口で討つ」とばかりに、今度は岸田派の候補者が二階派のところに殴り込みをかける構図になったのです。

 二階氏は先の総裁選で菅義偉支持を真っ先に言いだし、菅総裁への流れをつくり出したことから、論功行賞で菅政権になっても幹事長職にとどまりました。今、菅を支えているのは二階だけという感じで、党内では独歩高の権力を有しているように見えます。で、この”二階体制”が続けば、来秋の総裁選で菅続投の流れができてしまうので、岸田文雄氏にしては面白くない。捲土重来を期す意味から、来秋9月の総裁選以前にあると思われる総選挙で、岸田派の実力を示して現職二階派議員を落選させ、意趣返ししようという狙いがあるのです。

 この対立のもっと深い背景を探れば、二階対岸田の争いだけでなく、自民党内の反二階包囲網、権力抗争があるということでしょう。総裁選で菅を支持したのは二階派だけでなく、細田(安倍)派、麻生派竹下派、石原派がありました。派内の森山裕国会対策委員長が二階と気脈を通じて権力の一端を担っている石原派は論外として、細田、麻生、竹下の主流3派は、二階の独歩高が続くのは愉快ではない。総裁選時に菅が立候補したあと、この3派閥が二階、石原派を排除して記者会見したのはそうした思いがあったからです。

 自民党の主流派は、党を出たり、入ったりする人を心底で嫌います。石破茂氏が総裁選であれだけ忌避されたのは、1990年代初め、自民党が苦境にあるときに党を抜けたことが原因とも言われています。同じように、二階氏も小沢、羽田氏ら旧竹下派の一部とともに党外に出て新生党を創設、さらに新進党、保守党などに加わっています。生粋の党人からすると、いったん党外に出た人がなぜ今、自民党を我が物顔で牛耳っているのかという不快感、あるいは不信感さえ持っていることは間違いありません。

 という意味で、二階氏、二階派は今、謙虚さが求められるところですが、山口3区の林氏殴り込みに対し「売られたけんかは買う」「自民党は現職公認候補優先。党員は表立って無所属候補を応援できないでしょう」と居丈高に出ているようです。二階派独歩高つぶしは他派閥共通の思いであることは確かで、ひそかに林氏の支援に回る可能性もあります。しかも、河村氏は1942年生まれであり、今年78歳と高齢で、これもネックになりそう。現地の有権者が次の総理候補として林氏に期待するなら、無所属が自民党候補を破ることもありえましょう。

 ついでに、菅政権から見れば、菅氏自らが派閥を持たず、忠誠を誓う議員(菅グループ)も10人前後であることからすれば、自らの権力は派閥間の微妙なバランスの上に載っていることを肝に銘じておかなくてはなりません。二階氏への異常な偏重を見せると、内閣支持率の動向(低下)次第では、他派閥が神輿を担ぐのを止めてしまう恐れもあります。権力には「馬糞の川流れ」があることも頭の片隅に入れておく必要がありそうです。

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 上の写真は、九段坂北の丸公園入口にある高燈籠と品川弥二郎像。品川も長州藩山口県)出身の明治維新志士。