つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

安倍前首相も吉川議員もなぜ前例を見ない?

 昨年春の「桜を見る会」前夜、安倍晋三前首相の事務所が地元有権者向けに開いた東京のホテルパーティーで、集めた会費以上の経費を使ったことが問題になり、きょう安倍首相が国会の議員運営委員会に出席、「過剰サービスがあった」と認めて陳謝しました。同時並行的に、東京地検吉川貴盛農水相に対し、業者から500万円をもらったことで贈収賄罪を視野に捜査しています。この2つの事件を見るにつけ、自民党の議員ってなんで前例を見て他山の石にしないんだろうとよくよく考えてしまいます。

 安倍事務所の過剰サービスの件に関しては、小渕優子議員が後援会を東京の観劇会に招待した際、会費以上のサービスをしたという同様の事件があり、政治資金規正法違反で大臣の座を追われました。これは2014年のことで、それほど古い話ではない。確かに昔は、議員が有権者を囲い込むために、過剰なサービス、あるいは買収をするのは大っぴらにありました。山梨県のある市では、地方首長選の際、A候補の運動員が菓子の袋に2000円を入れて渡すと、受け取った有権者は「対立候補のBはもっと多かったぞ」と言って露骨に嫌味を言ったという話もあったと聞いています。有権者のレベルも低い。

 小渕優子の選挙区群馬では、中曽根康弘福田赳夫小渕恵三自民党の有力議員同士が争っていた中選挙区時代に自派の支持者を囲い込むために過剰サービスするパターンが続いていたと思われ、当時からの運動員は、小選挙区となった娘の選挙でもそのパターンを踏襲してきたのでしょう。彼女自身は東京生まれ、東京育ちですから、旧態依然の選挙パターンはよく知らないと思いますが、「地元運動員がやったことで、私は知らない」で通る話ではありません。

 その後は監視の目が一段と厳しくなりました。東京のある自民党衆院議員は有力後援者に高額のメロンとかカニとかをプレゼントしたことが問題視され、別の議員は地元有権者にうちわを配っただけでマスコミにたたかれ、大臣辞職しました。ということは、今、有権者向けにはたとえ少額といえども”過剰サービス”できないことは明白です。安倍氏のパーティ―に出た参加者は「このホテルでこの料理とは。払った会費では採算が取れないだろう」とどうして感じなかったのか。やる方もやる方だが、これを嬉々として受け取る方も問題だと思います。

 吉川議員は大臣在任中に、養鶏業者から政策で便宜を図るよう求められ、大臣室か、議員事務所や飲食店かで現金を受け取っていたと言います。この事件に関しても、甘利明・元経済再生担当大臣が大臣室で千葉県の建設業者から現金を受け取った同様事件がありました。現金授受の見返りに都市再生機構(UR)に圧力を掛けるよう求められたもので、事件は2016年に発覚、そう昔の話ではありません。ストレートに現金をもらうことがどんなに危ないことか、吉川議員はどうして分からなかったのか。

 吉川議員は地検の取り調べに「現金はあとで返すつもりだった」などと供述しているそうな。これも昔、現金の授受が問題となり、訴追された際に同じことを言った議員がいました。でも、これは言い訳になりません。受け取るのは嫌だが、相手との関係上その場で返せないというのなら、どこかに供託すればよい話です。いったんその場で現金を受け取り、自分の金庫に収めた以上、立派な収賄行為です。

 贈賄側はふつう、「先生、これは会計簿に載らないヤミの金ですから、大丈夫ですよ」と言ってきます。が、これも絶対信用してはなりません。渡し金の裏には相手の巧妙な計算があり、大きな罠を仕掛けているからです。また、相手は、議員が金を受け取ったと見れば弱みを握ったとしてますます要求をエスカレートしてきます。だれでも金は欲しい。でも目先の”利益”を優先してしまうと、議員本人は、その地位を失うばかりか、訴追され、牢獄に入る恐れもあるのですから、割に合いません。

 上の写真は、小生の自宅近くの公園内にある、紅葉する針葉樹。メタセコイヤか。紅葉して間もなく散るところです。