つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

ミャンマーのならずもの政権、承認する国はない

 ミャンマー軍部はいったい何を考えているのか、理解に苦しみます。「先の総選挙で不正があった」などと、トランプ米前大統領みたいに根拠不明の言いがかりを付けてクーデターを起こし、権力を強奪。人民がそれに反対し、デモや集会を行うと、無闇に銃をぶっ放す。すでに50人以上の無辜の民が殺害されたとか。今どき街の暴力団だってこんなアコギな真似はしない。人民ばかりか、多くの公務員の支持もなく、今後ずっと政権を維持していけると思っているのか。ヒステリックになっているとしか思えません。

 政治学で言うところの国家成立の3要素とは、一定の領域があって、そこに住む人民がいて、さらに主権、制度があることとなっています。ですが、国際関係論的に言えば、さらにもう一つ条件があって、それは他国がその国を承認して外交関係を結べるかどうかという点です。いかに「我が国は独立したぞ」「この領域で政権を確立したぞ」と叫んでも、他国が知らんぷりしていれば、それは対外的に「国家」とは言えないのです。

 かつて井上ひさしさんが小説「吉里吉里人」で、日本の一部を独立させるという奇想天外なストーリーを書きましたが、諸外国の承認行為がなければ、日本から独立した国ということにはなりません。近年でも、中東のイラク、シリアの一部領域を支配したイスラム過激派武装集団が「イスラミック・ステート」などと「state」を名乗って「国家」形成の振りをしましたが、だれからも「国家」として相手にされなかったことからも一目瞭然です。

 他国から見れば、ある国がクーデターや侵略を受けたことなどで政権が変わった場合、外交関係の継続を求めて、改めてその国を承認する必要が生じます。現在、ミャンマーでは、国内の人民が軍事政権に反対しているばかりか、一部の公務員、ミャンマー国連大使など海外外交官も反旗を翻しています。したがって、従来外交関係があった国々は改めてミン・アウン・フライン軍事政権の正統性を吟味しなくてはならないのです。で、改めてフライン政権を見ると、だれにでも銃をぶっ放すならず者集団の集まりですから、ほとんどの国は承認に値しないと見ていると思います。

 クーデター勃発当初、軍部の背後には中国がいる、中国が操っているという噂が飛んでいました。中国は今、盛んに「他国の内政には干渉すべきでない」と半ば軍事政権を認めるような素振りを見せていますので、そう疑われても仕方がない。ですが、よくよく見てくると、中国はアウン・サン・スーチー政権とうまくやっていました。彼女は、雲南省からベンガル湾のチャウピューに至る鉄道・道路ルート、石油パイプライン建設の中国利権に反対していませんし、むしろ中国資本が入って喜んでいたフシもありました。

 中国は軍事政権ができて新たな混乱が生じることなど望んでいなかったでしょう。ですから、中国がクーデターの後ろ盾になっているというのはうがった見方です。今、中国は明らかにフライン政権の承認をためらっています。先鞭をつけて外交関係を持てば、これまでも西側に良く見られなかった中国の対外的な評価はさらに下がってしまううからです。また中国は、フライン政権自身にかなりの無理があって、安定しないと見ているフシもあるので、しばらくは積極的に動かないのではないかと想像できます。

 欧米、日本など西側はもちろん、人民を敵に回し、民主主義を粉砕した軍事政権と外交関係など持つ気はありません。同じASEAN諸国も模様見です。となると、軍事政権は対外的に四面楚歌が続きます。国家は単独では生きていけない、まして発展途上国はそうであるので、軍事政権はいずれ窮地に陥る。諸外国の要求を呑んで、一定の原状回復策を考えざるを得なくなります。フライン司令官がいつ正気に戻って、妥協策に出るのか、どんな条件を出してくるのか。今、注目されるのはその辺りです。

上の写真は、横浜関内の大通り公園内で見た早咲きの桜と花壇の花。