つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

ワグネルの囚人リクルート、山上称賛おかしい

 よくよく考えれば、おかしな話だと思います。ロシアの民間軍事会社「ワグネル」が刑務所の囚人を隊員としてスカウトしていること。ロシア国家機構の中の正式な軍隊が囚人を使うのならまだ分かります。それもおかしな話ですが、刑務所って国の正式の機関でしょう。そこに入っている受刑者を民間会社が勝手に利用するってどういうこと?日本で言えば、市中の暴力団が「われわれも西南諸島防衛に参加するので、受刑者を貸してほしい」と言っているに等しい行動。「特別軍事作戦」はロシア国家が発動したものであり、暴力団同士の私的抗争とは違うと思うのですが……。

 ワグネルにリクルートされた囚人は前線に送られるという。一定の戦績を上げると、一定服役後に懲役刑がチャラにされるというが、前線で絶えず生死の境にいる状態で生き残れるかどうかはかなり怪しい。逆に、戦死を怖がり前線から逃亡などしようものなら、後ろから射殺されるか、捕まっても銃殺刑に処されるという。死刑囚なら一か八かの選択もありましょうが、懲役刑の受刑者はたまらない。で、ワグネルへの参加は酷な選択でしょう。

 それにしても、民間軍事会社にこんな権限を与えたのは、どういう法律的根拠に基づくものか。ワグネルのリーダーはプーチン大統領と個人的な関係があるようで、要は、プーチンが恣意的、独断的に決めたことでしょう。法律的根拠がないでたらめな措置であり、無秩序な国です。他主権独立国への侵略は大義も道義もない戦いなので、国家の正式な軍隊の将兵(正規兵)があまり働かないのは自然。であれば、生き残ると死刑や懲役がチャラになるという囚人の方が相当なインセンティブがあること間違いないですが、それでもかなりの確率で死に近いと思うと意欲は湧かないでしょう。

 おかしな話と言えば、もう一つ。安倍元首相を演説中に射殺した山上徹也に対し,「良くやった」という絶賛の声が依然止まず、減刑を求めたり、献金をしたりする人が後を絶たないというのです。中には100万円を現金で届けに来た人がいたとか。まるで英雄扱いです。これって山上の動機が「統一教会への恨み」ということで多くが統一教会への憤りに同調したためか、それとももともと安倍首相嫌いの人が「安倍を殺した奴は素晴らしい奴だ」などと判断したためか。

 ここでしみじみ考えなくてはならないのは、納得できる動機であれば、殺人は正当化されるのかという点。隣の国韓国は、1909年、ハルビン駅頭で伊藤博文を射殺し、死刑に処された安重根を英雄視し、ソウルの南山に安重根義士記念館が建てられています。小生もかなり昔に覗いたことがありましたが、テロリスト賛美は不快でした。1860年桜田門外で井伊直弼大老を暗殺した水戸、薩摩の浪士が合同で祀られたということはなかったと思いますし、戦後社会党浅沼稲次郎委員長を演説会場で刺殺した山口二矢の神社があるとも聞いていません。

 原敬犬養毅浜口雄幸の首相を殺したテロリストは論外。小生の知る限り、日本では少なくともテロを行った人間を英雄視し、その行為が公に顕彰されたことはないと思います。民主主義国では、テロリストをほめちぎる行為は止めるべきです。献金するのは、お金が余っている人なら自由ですが、減刑を求めるというのはもってのほかです。小生は、有力政治家を葬った政治的なテロの罪は大きいと思います。

 上の写真は、昨年末、小生が機関誌に原稿執筆している某団体の忘年会で催された中国四川省の地方演芸「変面」のパフォーマンス。