つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

デフレで、今年下半期に中国人爆買い客は来ない

 先週だか、先々週だか覚えていないのですが、日本政府が中国人団体客の訪日を認める決定をしました。2015年くらいからコロナ禍までの訪日客はいわゆる爆買い客で、電気釜、髭剃りをはじめさまざまな日本のハイグレードな製品を買い漁っていました。それはそれで、日本にとっては景気をアップしてくれる大変ありがたい消費者たちで、秋葉原の小売店舗などは大歓迎でした。ですから、今回の団体客の解禁で再び爆買い再現を期待するお店は多いと思います。でも、これに対し小生は悲観的です。訪日客はそれほど増えないし、爆買いも起きないのではないかと思います。

 というのは、今、中国はとてつもないデフレーションの傾向を示しているからです。中国の景気動向を端的に見る消費者物価指数(CPI)は、5月までは前年同期比でまだプラスでしたが、6月になると前年と同じ、さらに7月になると0・3%減とマイナスに転じたのです。製造企業の実務担当者に景況感を聴く購買担当者景気指数(PMI)は今年1-3月期は景況拡大・悪化の分かれ目ポイント50前後であったのですが、4月からは前途を悲観するマイナスに転じています。

 GDPの2割程度を構成していると言われる輸出が完全に停滞しています。これは、昨年、ゼロコロナ政策を取ったために工場が停止されてしまった影響のほか、外国企業が労賃のアップ、反スパイ法への懸念などさまざまな要因で工場を撤収しているケースが見られるからです。では、中国得意のIT産業は?これも習指導部がアリババ集団創始者の馬雲氏らをいじめたために全体的にシュリンクしています。軍事産業も西側から高精度の半導体が入らないために製造できないのです。

 加えて,GDPの3割を構成しているという不動産業もここ2年来、ガタガタの状態です。何しろ、人口14億人でしかないのに、不動産業者はすでに30億人が住めるまでの住宅を造ってしまったのです。右肩上がりの時はそれでも良かった。富裕層が資産維持の手段として2軒、3軒と所有していたので買い手には困らなかったのです。ところが、強硬な社会主義者である習近平国家主席は杓子定規に「住宅は住むもので、投機の対象にするな」とのお触れを出し、金持ちが多数の物件を持つことに圧力をかけたのです。

 それで、住宅は売れなくなり、すでに造ってしまった住宅は膨大な空き家群になってしまいました。中国ではこの空き家群を「鬼城」、造りかけて途中放棄した建築物を「爛尾楼」と呼びます。鬼城とはゴーストタウンの意味、「爛尾」とは後の始末に困るという意味です。造りかけて途中で建設を止めている物件を小生も中国各地で見ましたが、これが最近さらに顕著になり、後々の始末に困っているようです。で、中国の巨大デベロッパーと言われる恒大集団とか、碧桂園とか、保利集団とか、SOHO中国とかの大手が軒並み大赤字を出して、もうニッチもサッチも行かない状態です。

 不動産不況の上、IT産業、学校以外の学習塾、補習校などの教育産業も抑えられています。海外からの新規投資もありません。これでは、若者は、とりわけ専門性を身に着けた大学卒業生らが就職できません。国家統計局の正式発表でも6月時点で16-24歳年齢層の21・3%が失業しているとのこと。で、7月のこの数字はどれだけ跳ね上がっているのかとチャイナウォッチャーは注目したのですが、統計局は「7月以降の若年失業率は発表しません」と宣言してしまいました。臭いものには蓋ということか。

 ということで、最初の話に戻ります。中国はデフレ不況が募っているのです。株価も落ちており、金利は下がり、人民元の価値も低下している。ファンダメンタルズは悪い。これでは儲けられる人は限られるし、一般人民は将来が不安なので貯蓄に走ります。勢い、海外旅行なんて飛んでもないということになるでしょう。ですから、日本の大型店の経営者が期待するほど、今年下半期に中国人団体旅行客が増えるとは思えません。

以下は小生が連載しているサイト

チャイナ スクランブル 日暮高則|記事・コラム一覧 (kazankai.org)

 上の写真は、野毛山公園内の風景。独りポツネンと咲く白百合。誰が種を撒いたのか。思わず「白百合(黒百合か)は恋の花♫♪」と歌ってしまいました。下の方は、とうに梅雨が終わって盛夏なのにまだ咲き続けていた紫陽花。暑さに負けず頑張っているところがいじらしい。