つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

金正日料理人の話は面白かった

 先週日曜日、明治大学で開かれたアジア人権人道学会主催の「北朝鮮の内実を知る講演会」に行ってきました。テレビでおなじみの元金正日の料理人、藤本健二氏が最初に登場し、「強制収容所の人は地獄だったでしょうが、私は北朝鮮で天国を味わっていました」とぬけぬけと語っていました。でも、味わいのあるなかなか面白そうな男でした。
 彼は、たまたま料理人の募集に応じて北に行き、寿司職人になったわけですが、どういうわけか金正日に気に入られ、驚くことに金ファミリーの家族同様の扱いを受け、今度後継者に指名されたジョンウン(正恩)とも子どものころに親しく付き合っていたそうです。そのやりとりの一部始終を本(「北の後継者キムジョンウン」−中公新書)にし、この講演会でも売り出していたので、小生も一冊購入しました。
 彼の話を聞いて、いまさらながら驚くのは、金ファミリーのそのあまりにもけた外れた贅沢ぶりです。国内に「招待所」なるファミリー専門の高級ホテルが数十か所あり、そこそこには日本の最新鋭の娯楽機器が備えられていたというのです。元山の招待所には海の中に船形式のプールが浮かべてあり、金ファミリーが行くところ行くところとそのプールが移動していくとのこと。
 後継者になったジョンウンなるガキは10代のころ、70歳にもなる金日成の元ガードマンの男が招待所でくつろいでいたところ、そばに寄って行き、「大元帥様はなぜこんな小男を気にいっていたのか」などと言って足下にしたとのこと。でも、元ガードマンはガキの機嫌を損ねまいと、薄笑いをしてその場を取り繕ったというのです。なんとも悲しき独裁国家の在り様です。
 また、小生には強く印象に残ったのが、ジョンウンや、すぐ上の兄のジョンチョルの母親である高英姫の話。彼女は金正日最愛の女性だったと言われた人ですが、実は8歳まで日本にいた在日朝鮮人なのです。これは広く知られたことですが、藤本氏によれば、彼が日本人と分かっているのに、ただの一度も日本語を使って話しかけてこなかったというのです。日本にはいい印象を持っていなかったのか。あるいは、周りには在日を隠していたかったためか。
 こうした贅沢三昧のファミリーとはまったく好対象に、強制収容所で暮らしていた人の話は身につまされました。腹が減った女性が一生に一度腹いっぱい食いたいとばかり、自分の子どもを殺し、わずかしかない塩で茹でて食べたということを身近な話としてしていました。
 こんな国が本当に長く続いていいのでしょうか。神様はなんと非情なのでしょう。体制が崩壊したあとに、民衆が次から次に彼らの悪業を暴露する光景を速く見てみたいものですね。
 「北朝鮮関係講演会」での藤本健二氏。自書の販売もしていました。下の写真は、強制収容所を経験した人(サングラスの女性)との対談も。