つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

井伊直弼を見習うべきだ

 安倍晋三首相の自民党政権は、各世論調査を見ても、支持率7割という驚異的な数字が示され、現時点では安泰のようです。政権奪取からまだ3か月たっていません。米国でも新大統領が誕生すると3か月はハネムーン期間といってマスコミも批判を避けるそうですが、日本も、もともとそういう風潮があるためか、いや安倍政権に失政が感じられないせいか、批判じみたものはいまだ出ておらず、頼もしい限りです。
 実は小生、安倍首相の訪米で当然TPPが問題になると思っていましたので、党内の反対、賛成両派の対立が表面化するのではないかと心配していました。しかし、今のところ、農協のバックを受けた一部の議員が発言している程度で、激しい反対運動、党内対立になっていません。これまでのところ、安倍氏の見事なリードが功を奏しているようです。
 自民党は選挙公約で、「聖域なき関税撤廃を前提とする限り、交渉に参加しない」としていました。これって一見、交渉参加を否定しているように見えますが、実は「聖域なき関税撤廃を…」という条件提示の方に意味があるのであって、むしろ参加の意向を示しているのだと思います。というのは、「聖域」を協議するには交渉に入ることが前提となるわけですから、この条件表現ですでに参加を意味していることは子供の頭でも分かること。この文言を考えた人は、レトリックの天才かも知れません。
 安倍氏にいろ、石破氏にしろ、今の自民党幹部は結局、本質的にTPPの賛成派なのです。阿部、石破の両氏とも農村部を地盤にしていますが、代議士の2世ですから都会育ち。頭の中は都会のサラリーマン、工場に働く人の感覚と同じで、国際的な交流、物流なくして国家は成り立たないという認識を持っています。2人に限らず自民党の多く、いや世論調査をしても、世間ではそういう考えを持つ方が圧倒的でしょう。小生もその一人です。
 TPPに多くの問題があることは否定できません。農協は今の時点で損失が大きいことを問題にしていますが、なるほど現時点では損失が大きいでしょうね。でも、いつまでもだらだらと補助金農政を続けていいわけはありません。今のぬるま湯の制度で恩恵を受けるのは、当の農協という組織と三ちゃん農家(父ちゃんは勤め人で、じっちゃん、ばあちゃん、かーちゃんでやる農家)だけです。農業を産業としてしっかりとらえている人、企業はむしろ、農業の国際化を歓迎し、国際競争力のある農作物を目指していくと思います。
 世の中の流れ、トレンドとして経済的に日本が「鎖国」を選択していいはずはないのです。「鎖国」はあくまで一時しのぎにすぎません。江戸幕府末期、尊王攘夷の嵐の中で、暗殺の恐れを感じながら、毅然と国を開いていった井伊直弼の執政を見習うべきです。少なくとも安倍首相はそういう気概を持っているように見受けられます。