つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

ミャンマーの政権交代、一筋縄でない

 ミャンマーの総選挙はどうも野党の国民民主連盟(NLD)が勝利を収めそうです。ただ、憲法上の規定で、上下両院の議席の4分の1が無条件に軍人に割り当てられているため、NLDが単独が大統領指名できるかどうかは微妙。たとえ指名権を得たとしても、外国籍の家族を持つ政治家は大統領になれない決まりだから、党首のアウンサン・スーチー女史自身は就任できない。女史の意を汲んだ代理を立てるしかありません。民主化と言っても、片肺の不自由さを感じさせます。
 小生は、今春まである通信社からミャンマー情勢に関わる英文ニュース翻訳を任されていたほか、2年前にミャンマー現地へ取材に訪れていたので、それなりに同国の仕組みや情勢を把握しています。「スーチー女史は所詮お嬢様。政治のことなど分からない」などと西側メディアではいろいろ毀誉褒貶あるけど、やはり現地ではスーチー女史の人気は高い。ですから、今回の選挙でNLDが勝つことは予想できました。
 だが、問題はNLDが実際に権力を掌握できるかという点です。一つは総選挙の結果やその後の成り行き次第で、軍部がクーデターを起こす可能性があること。もう一つはNLDが多数派を取っても、最終的に軍部を敵に回しては権力機構を動かせないという点。スーチー女史は結局軍部にすり寄らざるを得なくなり、結果として表面的にはNLD政権でも、実質的には準軍人政権になってしまう可能性もあります。
 テイン・セイン現大統領は民主化を進めた先進的政治家だが、もともとは軍人。ここ数年間の権力掌握で、権力のうまみを知り、総選挙の結果を簡単に受け入れないのではないかとの危惧があります。すでに今年夏、スーチー女史との連携を模索していた与党・連邦団結発展党(USDP)のシュエマン党首(下院議長)らを解任するミニクーデターを決行しました。今後もこうした粛清がなしとは言えません。
 また、ミャンマーは国内に少数民族の支配地区を多く抱えており、軍の力を抜きに支配は不可能です。軍の力が必要ならば、軍部が政治に介入するのもまた必然。その点を見極めずに、簡単に民主的な政権交代があり得るなどと楽観視するととんでもないことになります。

 上の写真は、国宝・松江城を掘割の方から眺めた風景。