つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

稀勢の里の小心風は治ったのか

 大相撲初場所は、稀勢の里が初優勝し、横綱昇進を確実にして終わりました。たった一回の優勝で横綱にしていいのかという点で論議はありますが、まあ、日本人が久しぶりに横綱になるというのは喜ばしいこと。昨年初場所の、これも日本人としては栃東以来久しぶりという琴奨菊の優勝と同じように、三代目若乃花以来19年ぶりという日本人横綱の誕生を素直に拍手喝采したいと思います。
 今場所の顔つきを見ると、これまでのように目をぱちくりすることも、薄ら笑いを浮かべることもなくなり、控え席でもかなり落ち着いた雰囲気がありました。でも、例の小心風(プレッシャーに弱い症候群?)が完治したかと言えば、そうは思えません。というのは、8日目に白鵬荒鷲に負けて稀勢の里一人が全勝に立った翌日の9日目、今場所精彩のない琴奨菊に簡単に押し出されてしまったからです。
 この負けを見た時、小生は、あいつまたまた小心風が出たな、自分がトップに立つと必ず委縮してしまう病気が出たな、これでは最後は白鵬に逆転されてまた”準優勝”だろうと思いました。ところが、あろうことか稀勢が琴奨菊に負けたすぐあとに、白鵬も高安に負け、稀勢のリードが変わらなかったのです。これが第一の僥倖。
 後半、稀勢の里リードのままで進んでいったのですが、最後は逆転があるだろうと見ていました。というのは、13日目に豪栄道の休場で不戦勝になったのがまず不安の種。翌日は、幕尻に居ながらも好成績の逸ノ城が相手となり、不気味でした。一方、一差の白鵬の相手は貴ノ岩だから、恐らく稀勢は負け、白鵬が勝つのではないか。同じ2敗同士で千秋楽に戦えば、例の小心風が出て白鵬の逆転勝ちになるだろうと踏んでいました。
 それがラッキーだったことに、稀勢の里逸ノ城に勝ち、白鵬が逆に委縮したように貴ノ岩に東土俵に寄り切られて完敗、この時点で稀勢の優勝が決まってしまったのです。白鵬が勝って一差のまま千秋楽を迎え、直接対決したら、どうなるか分からない。またまた逆転の恐れもあったのに、それが回避されました。小心男にとってはまさにラッキーの上にラッキーだったのです。
 優勝が決まった時点で、横綱審議会も審判部も、千秋楽を待たずに横綱昇進を約束する発言ばかり。そう言われれば、白鵬戦も気楽に戦える。なんだか、小心の稀勢の里を気遣ってさまざまな配慮がなされたようにも見受けられます。結局、白鵬戦にも勝って横綱昇格に華を添えることになりました。
 配慮があって当然かも知れません。興行主の相撲協会もわれわれも、久しぶりに日本人の横綱土俵入りが見たいのですから。小生は半年前の秋場所後のブログで、稀勢の里は将来一回も優勝できないし、横綱にもなれないだろうと冷めた予想を書きました。それは率直に謝らなければなりません。あの時は、師匠の隆の里(元鳴戸親方)ファンでもあった小生の怒りもありました。
 今回、さまざまな”気配り”や僥倖があったとしても、14勝1敗というのは立派な成績。昨年の年間最多勝も見事でしたが、、。でも、問題は横綱になってからです。横綱で2回目の優勝がいつできるのか。もう30歳と相撲年齢から言えば若くないし、高安、正代、御嶽海とかいう威勢のいい若手が上がってきている。
 しかもライジングパワーはモンゴル勢でなく、同じ日本人力士なのです。外国人よりは同胞に活躍してほしいと願う日本人一般の支持をこれからは集中的に受けられなくなります。稀勢の里にまたまた小心風が吹かないよう祈りたいものです。

 上の写真も、前回に引き続き我が家の愛犬マオ。