つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

他人のことあげつらう前に自らの反省を

 テレビの終戦特集番組での話題をもう一つ。NHKが米軍による日本本土への大空襲、中国ハルビンでひそかに行っていた細菌研究731部隊ビルマでの日本軍インパール作戦を取り上げていました。この中でとりわけ驚いたのは731部隊の話。これまでテレビで真正面からこの問題を取り上げたケースは、小生の記憶の限り、なかったと思ったからです。
 1980年前後に、作家森村誠一氏が731部隊のことを書いた「悪魔の飽食」という本がベストセラーになりました。小生も読み、初めて関東軍に細菌研究部隊があり、731部隊の存在を知りました。小生が北京に駐在していた確か1982年ごろ、森村氏が取材のため再度中国を訪問したので、他社の記者とともに北京でお会いし、直接話を聞いたこともありました。
 北京駐在のころ、小生自身も731部隊のあったハルビン郊外の平房地区を取材していますし、6、7年前、日本からハルビンに旅行した際も、再び平房の部隊跡に行っています。82年の最初の訪問は冬だったので、荒涼とした雪原の中にポツンと部隊の残骸建物があったという印象だったのですが、再訪したときは夏。付近には高層住宅が建ち、跡地もネオン輝くおどろおどろしい記念館に変わっていたので、びっくりしました。
 それはともかく、NHKの番組では、現場で細菌研究に携わり、捕虜に人体実験を試みた医師や衛生関係者の実名が出され、彼らがその後日本の医学界で重鎮になったことも明らかにされていました。日本にはまだ彼らの関係者、子孫もいることなのに、随分思い切った企画だなあと感じました。
 また、日本への大空襲を取り上げた番組でも、もともと無差別爆撃をしたのは日本軍の方で、重慶蒋介石政府の所在地)爆撃が最初。米軍はこの先例に倣ったもので、日本は報復を受けたのだという趣旨で伝えていました。要は、自業自得、因果応報と言いたかったのでしょうか。
 ジャーナリズムの視点で言えば、自らのかつての“非”に対し、反省を込めて報道するのは必要なことです。重慶爆撃にしろ、731部隊の罪業にしろ事実なのですから、小生はNHKが報じたことはそれなりに立派だと思います。でも、笑ってしまうのは、中国の外務省スポークスマンがわざわざこのことを取り上げ、「真相を明らかにする日本の知識人の勇気を称賛する」と評価したこと。
 中国が日中戦争で大きな被害を受けたことは揺るぎないことですが、それ以上に人民にむごい結果をもたらしたのは、反右派闘争であり、人為的な原因による大飢饉であり、大勢を無差別につるし上げ、虐殺した文化大革命であり、89年6・4の天安門事件です。大飢饉、文革では数千万人が死んでいます。
 党と政府はこれら共産党政権になったからの悪業を一切明らかにせず、いわゆる中国の”知識人”にこれらの事実を掘り下げ、報じることも許していません。そんな国が他国の報道の在り方などを論じる資格があるのでしょうか。自らのことは隠ぺいして、他人のことばかりをあげつらうというのはちゃんちゃらおかしい行動様式と見られても仕方ないでしょう。


 上の写真は、奥羽本線福島県境にある米沢市板谷」の駅と次の「峠」の駅の乗降風景。