つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

やはり何も出なかった佐川喚問

 今日、森友学園の国有地購入、それに伴う公文書改ざん問題に絡み、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問がありました。世間では大いに注目されていたようですが、小生は最初から彼は何も話さないだろうと思っていたので、大した関心もありませんでした。ですから、テレビ中継もずっと見続けることなく、一番テンションの高い小池晃共産党幹事長のところを中心に、つまいぐい程度に見ただけでした。
 佐川氏はあくまで冷静。与党議員の質問に対し、改ざんには政府の介入がなかったことを強調し、政府・自民党に恩を売る一方、野党側の質問では、肝心のところに来ると、「刑事訴追を受ける恐れがあるので」と証言を拒否しました。これは予想されたこと。昨年の駕籠泰典森友学園元理事長の時でもあったように、国会の証人喚問でよく見られる逃げの常套手段です。
 小生が社会部記者をしていた時にもこの種の証人喚問が多くあり、取材もしましたが、いつも感じたことは、国会で証人から実質的な回答を得ることは不可能に近いです。一番の問題は、質問する議員が大した勉強もしておらず、追及する中身が乏しいこと。質問する議員はテレビ中継を受けて、選挙民に活躍する華々しい姿を見せられればハッピーなのです。二番目は、証人側が弁護士と事前に十分想定問答を考え、どう答えれば逃げられるかを十分研究しているからです。相手に言質を与えるような回答は金輪際しません。
 そして、三番目は最初に触れたように、最後は「刑事訴追の恐れ」を盾に証言を拒否することができるのです。国会で、「参考人」の発言は刑事責任が問われませんが、「証人」喚問で虚偽発言すれば訴追されます。証人はその辺のことを十分考えて、のらりくらりと逃げるのです。ましてや、佐川氏は財務省でエリートコースを進んだ一流の官僚であり、その言葉使いの巧みさ、能弁さ、場合によっては詭弁さえ弄する力は図抜けていましょう。
 野党側は今、首相夫人の安倍昭恵さんの証人喚問を求めていますが、彼女が出てくる可能性は皆無。こう言っては何ですが、昭恵夫人は残念ながら一連の行動からして頭が良さそうには見えず、とても、佐川さんのような能弁さは期待できません。今回のケース、多くの官僚が森友学園問題での首相夫人の介入を忖度し、文書改ざんなどという大きなかけに出たのですが、夫人自身は天真爛漫のノー天気で、とても他を”忖度”する発言、行動などできないでしょう。
 そればかりか、首相夫人などを喚問の場に出したら、それこそ首相の立場は脆弱化し、今後職務を全うすることなどできなくなります。9月の総裁選で安倍氏は3選を図り、東京オリンピックまでの権力掌握を狙っていると言いますが、夫人が国会でしどろもどろの発言をし、しかもその発言によって重大な言質まで取られたとしたら、内閣支持率はさらに急降下してしまうでしょう。最悪、夫人への喚問だけは避けなければなりません。
 ところで、野党側が強く求めた佐川喚問が終わって、このあとはどうなるんだろう。引き続き昭恵夫人の喚問を求めると言っていますが、安倍首相と自民党がこれに絶対応じませんから、野党側は振り上げたこぶしをどう下すのか。来年度予算案は3月末に自然成立が決まっているし、”人質”に取るような材料がない。結局、うやむやのうちに終わってしまうのでしょうか。
 野党側はそれでも、「一定の成果を上げた」として矛を収めるのかも知れませんが、自民党内はやはり秋の総裁選をにらみ、この件を利用して政局に持っていこうとする動きが出るでしょうね。安倍内閣の支持率が40%前後と急降下している現状を見るにつけ、次期候補として一番手である石破茂議員がどう動くのか。政治記者ならずとも非常に関心が持たれるところです。


 上の写真は、岐阜県白川郷(上)と富山県五箇山(下)の合掌造り家屋の風景。先週末、行ってきました。