つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

20人脱走あった塀のない刑務所の意味

 愛媛県の刑務所の作業場から受刑者が逃走し、5日目を迎えてもいまだに逮捕どころか、発見もされていません。現在、瀬戸内海の島の一つである広島県尾道市向島まで行き、そこで潜伏していることは分かっています。ですが、1000人近くの警察官を動員しても、きょう夕現在、潜伏の痕跡はあるものの、本人は見つかっていません。異常事態です。司法当局側のドジと言うか何と言うか。話になりません。
 逃走しているのは平尾龍磨(27)なる、窃盗罪などで服役していた男。今、向島の中では、車が盗まれたり、室内荒らしなどの窃盗事件が絶えないそうですが、もともと窃盗の”プロ”なので、この種行為はお手のものでしょう。向島に彼の親戚、友人、関係者がおらず、手助けできないなら、長期間、ここで”生活”するには、だれかの家に上がり込み、住人を脅して衣食を出させるなどの行動に出ざるを得ません。島民は不安で仕方がないでしょう。
 このつまらない逃走劇の原因を作ったのは、塀のない刑務所です。松山刑務所の出先である大井造船所という作業所。塀がないために、今回を含め大小規模合わせて17回20人の脱走事件が起きているといいます。これだけ脱走されて、よくもまあこのシステムを継続してきたものだ。そもそもこんな作業所を考え出した愚か者はだれなのかと問いたくなります。
 一般に、刑務所の役目は、犯罪者に対する懲罰的意味と更生を図るための職業訓練的目的があるとされています。塀を高くしてシャバと分離し、規則正しい苦渋の生活をさせるのは懲罰的な意味があるためでしょう。その懲罰性を無視し、松山刑務所は特に脱走しやすそうな塀のない作業所を作りました。
 出所後の更生を優先させたのかも知れませんが、受刑者にしてみれば、シャバとの接近によって却ってシャバへのあこがれを強く持ってしまうこともあるでしょう。この作業所の設置、20人脱走のことを考えれば、無謀だったと言わざるを得ません。脱走者をつかまえるために、どれだけ無駄な労力を要するかも考えておくべきでした。
 それにしても、脱走者自身、愚かと見られても仕方ないでしょう。塀のない作業所は普通、模範囚で出所が近い受刑者とされています。平尾も恐らくあと1年以内我慢すれば、出られたのだと思います。その我慢を振り切って、さらに罪を重ね、刑期が延びることを覚悟してまで脱走させた動機は何だったのか。記者的な感覚で言えば、むしろその点が気になります。

 上の写真は、北陸新幹線富山駅を降りた先にあったキャラクター。