つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

平和攻勢の裏にはマヌーバーがある

 つい昨年末まで「ソウルを火の海にする」などと息巻いていた北朝鮮の青年独裁者が今冬の平昌オリンピックを契機として突如変身、平和攻勢に出ています。なんで突然180度の転換を図るか分からないし、本当に非核化に協力するのかも分からない。それでも、もともと対北融和派のムンジェイン韓国大統領はこのムードにすっかり酔いしれて、無条件に相手の融和ポーズに同調しています。これでいいのか。
 独裁国家というのは実に便利です。国民に何の説明もなく、金正恩は意のままに政治の方向を変えられる。民主主義国家なら、こんな国際関係の大転換を図る場合、野党側への説明を含めて相当の期間を要するでしょうが、北朝鮮はオリンピック前に何の前触れもなく(自国民だけでなく国際社会に対しても)変身しています。戦争ムードから平和ムードに向かうならいいではないか、何を過剰に不審がるのだいう意見もありそうですが、事はそんなに簡単に割り切れるものでしょうか。
 北朝鮮が過去に平和攻勢に出た時には、必ず裏で何らかの戦争準備工作をしているというのが通り相場です。マヌーバーだらけの国なのです。朴正熙大統領の時代にも南北融和の動きがありました。1972年5月に韓国の李厚洛中央情報部長が平壌を極秘訪問し、北側の使節もソウルを訪問。その結果、「互いに 武力行使しない」という南北共同宣言が出されたことがありました。ですが、その融和ムードの中でさえ、北朝鮮は南に侵攻するための地下トンネルを軍事境界線の下に掘っていたのです。
 この南侵トンネルは4本もあると言われ、小生も板門店を訪れた折にそのうちの一つに入らせてもらいました。地下20メートルほど、幅2メートル弱で重火器のほか小型の車両なら通れるくらいの広さがあり、トンネルは南の方に行くにしたがって若干の上り勾配になっている。これは、掘削による漏水が南側に行き、発見されないよう工夫されたものだと言われています。これを見た時に、北朝鮮の武力統一にかける”熱意”と平和攻勢の”嘘”を強く感じました。
 1994年、2003年の核兵器開発疑惑により米朝間の危機が高まった折にも、金日成と息子の金正日は核開発を止める素振りを見せましたが、これらもすぐに裏切られたことが分かりました。結局、あの国は、いやあの金王朝は、どんな政治的イベントも自らの王朝支配地域を拡大していくため、あるいは王朝システムを守るための手段にしてしまうという恐ろしさを持っています。
 今回の刈り上げ君の平和攻勢では、裏でどういう工作が進められているのか。あるいは南北交流を進めていくことで、大量のエージェント、スパイを南側に送り込み、南方攪乱の一大基地をつくることも考えられます。すでに、これまでの脱北者の中にも、洗脳が解けず金王朝に忠実な相当数のエージェントが混じっており、秘密裡に活動していると聞いています。その意味では、だれでも寛容に受け入れる自由と民主主義の国家は、胎内に異分子を抱える分だけいかに脆弱であるかを再認識させられます。

 上の写真は、通っている大学に行く途中にある人家の花。