つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

習近平写真に墨汁かけた女性の狙いは

 中国の市井で今、驚くべき動きが始まったようです。というのは、7月4日早朝、上海市のあるビルの前壁に大きく張られていた習近平国家主席のポスター写真に墨汁を掛けた女性が出現し、しかもその様子を自撮りした動画をSNSにアップしたのです。これは共産党に対する反逆行為ですから、この女性は逮捕され、アップ動画もすぐに消去されてしまいました。しかし、この勇気ある女性に続こうと、各地で同様の行動に出る若者がいるそうです。
 「いるそうです」と伝聞でしか言えないのは、中国に報道の自由はないので、反共産党的ニュース、指導者に歓迎されない内容のニュースは報道されないのです。国内のメディアどころか、海外のメディアも取材させません。ですから、こうした情報はSNSのゲリラ的、断片的なアップでしか見られません。いやー、実に不自由、不愉快な国です。一切の批判を受け入れず、謙虚になれない人間も、体制も、ろくなものではありません。
 習近平写真に墨汁をかけたのは董瑶琼なる湖南省出身の29歳女性。上海の不動関係会社に勤務していた一般サラリーウーマンとか。彼女は墨汁を掛けながら、「習近平の独裁的な暴政に反対する」「共産党は私をマインドコントロールし、迫害している」と叫び、そして、「私のしたことをよく見なさい。習近平よ、私はここにいるから、捕まえに来なさい。私は逃げないから」と挑戦的な言動まではいたようです。
 今年春の全人代で、習近平国家主席10年任期の憲法上の規定を削除し、無制限に権力の座にいられるように変えました。その後、習近平の独裁化、個人崇拝化が進んでいて、中国は重苦しい閉塞状態が続いていました。ですが、中国の若者の知的レベルが上がった今、こんな状態は長く続かないと小生は思っていました。案の定、全人代から半年も経たないうちに勇気ある若者、それも女性が出てきました。驚きとともに快哉を叫びたくなる心境です。
 で、この女性の行動、たった一人の反逆行動であったのか。小生はそう見ていません。恐らく裏で共産主義青年団がバックアップしていないだろうか。というのは、今、共産党ヤングジョネレーションの知的集団、将来のエリート輩出機関とされる共青団習近平のいじめに遭い、組織が縮小され、その存在感が薄れています。董なる女性が共青団員であれば、この動いは大いに注目に値します。
 習近平の個人崇拝キャンペーンは、党の長老も苦々しく思っている様子。それはかつての毛沢東個人崇拝を見ているからです。毛の神格化からファナティックな文化大革命が発動され、多くの優秀な党官僚が批判され、失脚する悲惨な状況がありました。その悲劇を二度と起こさないためにも、長老はこの夏の北戴河会議で習をいさめようとする動きがあるようです。
 北戴河会議とは、共産党の中央幹部が毎年8月ごろ、河北省の避暑地北戴河に集まって、自由に意見交換する場です。長老の批判があっても、習はあくまで個人独裁を続けようとするのか。それほどに党内の権力基盤を確立したのであろうか。この夏の北戴河会議が見ものです。

 上の写真は、我が家の愛犬マオ。