つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

依然思惑錯綜するサウジ記者の殺害事件

 サウジアラビアの反体制ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の死亡、殺害に関して、米国のCIAがムハンマド皇太子の指示で行われたことを明らかにしました。ここで面白いなと思ったのは、トランプ大統領はサウジに入れ込んでいるので、絶対に皇太子の関与は言いたくないのに、CIAが勝手にそういうことを言ってしまったこと。もう一つは、CIAの情報網でそこまで調べ上げていたということです。
 トランプは自身、恐らくサウジに利権を持っています。だから、ムハンマド皇太子と直接外交上のやり取りさせていたのは、ほかならぬ娘イバンカの夫ジャレット・クシュナーでした。サウジは産油国ですし、今後石油に代わる産業振興としてIT関係の発展を目指していますから、無限の利権があります(孫正義さんはもそれに乗った口)。将来にわたって娘夫妻にその利権を確保させようとしているのは間違いない。ですから、トランプはやはりクシュナーのカウンターパートであり、サウジを独裁的に牛耳っているムハンマド皇太子をカショギ事件の首謀者にしたくないのです。
 でも、”親の心子知らず”、CIAはトランプの思惑などつゆ知らずなのか、それとも知っていながらあえてトランプをつぶそうとしているのかは知りませんが、ムハンマド皇太子首謀説を喧伝しています。これでトランプも苦境に立つでしょう。皇太子の事件関係性についてまだないような口ぶりですが、トルコ当局やCIAが証拠を握っている以上、抗弁できません。
 トルコのエルドアン大統領はますますかさにかかってムハンマド皇太子の首謀説を煽っています。イスラムの盟主国はずっとサウジアラビアでしたが、トルコにしてみれば、昔セルジュク、オスマンイスラム大帝国を築いたのに、石油が取れるだけの国がなんで盟主国だとの思いがありましょう。エルドアンは我が方がイスラムの盟主国にふさわしいと自負したいのです。それがまた、国際関係の中でトルコの地位を高め、ひいてはエルドアンの権力をますます固めさせると確信しているのです。
 一方、サウジはそういうトルコの狙いを知っているから、サウジの力をより鮮明に示そうとします。サウジの鉱物資源相が原油の減産継続を宣言しました。これまでイランやロシアが減産に動いたときに、サウジはいつも西側に味方し、減産には応じませんでしたが、今回、皇太子への集中砲火を見て、もう「われわれは西側の経済体制維持に協力しない」との意思を示し、脅しにかかったのです。
 ”たかが”一人のジャーナリストの殺害ですが、各国、各指導者がさまざまな思惑を持ち、動き始めています。驚くことに、今月末アルゼンチンで開かれるG20首脳会議にムハンマドは出席するそうです。出なければ、後ろめたさを表してしまうし、出れば各国指導者の無視に遭いかねませんので、難しい決断だったでしょう。ですが、結局、後者を選びました。そういう意味では、ムハンマドという男、したたかでもあります。

 上の写真は、奄美大島にある田中一村画伯の美術館。彼は奄美が好きで、長期滞在したそうです。