つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

「フランス・ファースト」のルペンでなくて良かった

 今回のフランス大統領選挙、まあ、EUNATO体制支持派のエマニュエル・マクロンが勝って良かったと思います。こんな時期に、欧州の中核であるフランスにおいて、プーチンと懇意で、NATOからの脱退もほのめかしていたマリーヌ・ルペンが当選していたら、プーチンの非道を咎める西側の一致団結の体制にほころびが生じ、暴虐者を喜ばせるだけでしかありません。まあ、最後は多くのフランス人の理性的な判断があったということでしょうか。米英もドイツも東欧諸国も一安心したのではありませんか。もちろん、日本も。

 でも、前回選挙のマクロン、ルペン一騎打ちより、今回の方がルペン支持が多かったんですね。この理由としては、フランスの物価高をあたかもマクロンの責任のようにしてルペンが批判、追及したことがあったようです。でも、よくよく考えれば、物価高はフランスだけの問題でなく、全世界的な現象。要は、合理的なグローバルサプライチェーンが崩壊してしまったことが原因です。過半数の理性的なフランス国民はそう判断したからまだ救われたのであって、6年前の米大統領選でトランプ現象が起きたような事態になったら大変でした。

 プーチンが対ウクライナ戦争を始めて欧米が制裁に走り、現在、ロシアからのエネルギー供給ラインが切断される方向にあります。サウジなど他の石油産出国が増産を見合わせている状態では絶対量が不足し、エネルギー価格は上がります。さらに、世界のほとんどが主要な食糧としている小麦はロシアやウクライナが主産地。戦争によって減産されれば、小麦、さらにはトウモロコシの値段は上がります。戦争以前は安価なブツを供給し合う合理的な相互サプライ体制があったのに、これが崩壊してしまったのですから、すべての値段上昇に跳ね返ったのは当然のことです。

 ルペンは当選したら、ロシアー西欧間のガス供給ラインを元に戻すというようなことを言っていましたが、これはすなわち、ロシアがウクライナを侵略しようと何しようとフランスには関係ない、制裁は要らない、安価なガスを供給してくれるロシアとはずっと仲良く、手を結んでいくと言っているのに等しい。隣国を平然と侵略する国家に対し何のわだかまりもなく、受け入れるとは恐れ入る。ルペン支持者はそれでも良いと思っているのか。各国は制裁によって”返り血”を浴びる、すなわち品不足、物価高という自国経済にも影響が出ることを我慢しているのに、フランスだけ抜け駆けできるのか。

 前回よりルペン支持者が多かったということは、そういう選択の方が良いと判断している人が相当数いたということでしょう。もし、ルペンが当選していたとしたら、「フランス・ファースト。他は関係ない」という自分勝手が通る民主主義の悪い面が出現してしまうことになります。となれば、西側の教養ある人は、フランス人の身勝手さに呆れ、軽蔑するでしょうね。ある意味、ルペンもウクライナ侵略勢力の一員だと見なされてしまうかも知れません。いずれにせよ今回、自由、平等、博愛のフランス精神が引き継がれて良かったです。

 幸い、日本の岸田政権は欧米に同調して厳しい対ロシア制裁を課しています。これで岸田内閣の支持率は6割以上とぐんと上がっています。ロシアに対し厳しい姿勢OKというのはすなわち侵略を受けているウクライナに同情的だということですから、日本人の多くの国民の感性は正常だと思います。少なくとも、国内野党にルペンのような身勝手な党首がいないのも救われます。

 上の写真は4月初めころの渋谷・ハチ公前広場の風景。マンボーが明けたためか、ものすごい数の人がいました。