つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

「モノ言えば唇寒し…」が分からない吉野家幹部

 口は災いの元と言いますが、牛丼チェーン「吉野家」の常務取締役さんが早稲田大学の特別講義で、吉野家に客を呼び込むため、「地方から出てきた生娘をシャブ漬けにする」というような言葉を使ったとか。これがSNS上で大炎上したそうです。無責任な言い方をすれば、いやー、実に面白い、言い得て妙なのでしょうが、例えに品がなさ過ぎます。シャブ(覚せい剤)は世の御禁制品ですから、ある種「泥棒するように稼ぎまくれ」とか「空き巣狙いのように個別訪問しろ」などと言っているのに等しい例えだと思います。

 百歩譲って、店の従業員相手の話だとしたら、内輪のこととして、それほど問題にならなかったのかも知れません。でも、大学の授業は公的なものであり、その場ではふさわしくありません。「シャブ」は隠語であり、およそ闇の”業者”が遣う言葉。「生娘」は辞書で「うぶな娘」「処女」などと説明していますが、今どきの若者はほとんど使わないどころか、世の中一般でもほぼ死語に近いワードでしょう。それだけに、学生からすれば、聞き慣れない2つの言葉の出現に飛んでもなく驚いたことかと思います。

 犯罪行為を肯定的な意味、積極的な意味合いで使うのはまずい。昔、ある衆院議員が全日本私立幼稚園連合会主催の討論会で、何かの事件を引き合いにして、「集団レイプする人は、元気があっていい。まだ正常に近い…」などと発言し、顰蹙を買いました。この議員はその後、農水大臣に就任しましたが、この女性蔑視言葉をずっと根に持たれ、非難され続け、年齢がそれほど行ってない時期に落選してしまいました。幼稚園関係団体での発言としては違和感あり過ぎるし、小生から見ても、レイプという犯罪を元気者の例えに使ったのはどう考えても非常識だと思います。

 小生がかつて講義を受け持っていた私大では、学期末に学生にアンケート調査を行い、「教師にセクハラ発言があったか、差別的な発言があったか」と聞いていました。ですから、小生も行き過ぎた発言がないようかなり気を遣っていましたが、それでも我々の年代特有の女性差別的な言葉が出てしまうことがあります。例えば、「女のように腐った…」とか「女々しい」とか「もっと男っぽくやれ」などの男女の特性を強調するような言葉です。小生は使った記憶がありませんが、あるいは無意識に出たことがあったかも。

 アンケートの結果は、学期が終わって休みに入ると自宅にメール送信されてきます。教師はその結果について自分なりの評価、弁明をしなくてはならないのですが、もし学生の多くが「セクハラや差別発言があった」と指摘した場合、なんて弁解していいのか困ってしまいます。幸い、小生はほとんど「セクハラや差別発言があった」と認定されたことはなかったので、こうした弁解をしないで済みました。小生はフェミニストなので、とりわけセクハラ発言はなかったと自負しています。

 教師仲間、特に大学としっかりとした雇用契約がある専任教師の中には、「学生の評価など気にしない方がいい。面白がって悪く書くヤツがいるから」と言って、平然としていた人もいました。でも、非常勤講師の場合、学生の評価次第で次の年の契約がなくなる場合もあり、注意が肝要。という意味で、小生は20年以上、この仕事が続けられたのですから、それなりの講義内容と学生への接し方があったからではと、今さらながら自画自賛しています。

 「モノ言えば唇寒し秋の風」ではないですが、言葉の選択は難しい。一つの言葉で一生が終わってしまう場合があります。吉野家の常務殿もこの言葉で職を追われてしまいましたし、件の議員も落選しています。特に感情が激している時には、非常識な発言をしやすいのですが、どの場においても、十分に頭の中で咀嚼してから言葉を発した方が良いように思います。

 上の写真は、開幕戦での横浜スタジアム周辺。「ウクライナの民が苦しんでいる時に暢気に野球なんか楽しんでいいのか。ノー天気過ぎる」って言うのも問題発言なのかも。ちなみに、小生は中華街に行くので傍を通っただけ。