つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

英国などは社会ダーウィン主義で良かったのか

  今回の新型コロナウイルスで各国の感染者と死亡者を見ていると、国情や政策の違いが浮き上がってきます。死亡者が多いスペイン、イタリアは医療崩壊を起こしためで問題外ですが、英国、スウェーデンなどは、国内流行に対し明らかに”放任主義”的なところが見られます。米国のトランプ大統領も最初のころはそんな感じがありました。これは、疫病も社会現象であるのなら、これを乗り越えられるかどうかは個人の問題だとする、英国の学者ハーバート・スペンサーが唱えるところの「社会ダーウィン主義」の考え方が背景にあるように思えます。

 人口6600万人の英国は、5月7日現在で20万人以上の感染者で3万人以上死亡しています。2倍の人口を持つ日本の死亡者がわずかに550人程度であることからすると、極端な多さ。人口わずか1000万人強のスウェーデンでも感染者が2万4000人になり、死亡者は3000人にも達しそうな数です。日本人から見ると、「福祉国家と言われる両国なのに、なぜ」と思ってしまいますが、この両国はそれなりの考え方を持っていたのです。

 それは、英国、スウェーデン政府が”意図的”に国民に感染させて「集団免疫力(herd immunity)」を付けさせようと、外出禁止、都市封鎖などの極端な公的な防疫措置を取らなかったためです。この発想の原点は社会ダーウィン主義。つまり、歴史上いかなる社会、時代でも疫病、自然災害、戦争とさまざまなな厄災が続いてきたが、これらをうまく立ち回った人間だけが生き残ってきたのであって、それでいいんだということ。つまり、適者生存(survival of the fittist)の考え方です。

 「適者生存」はもともと無秩序な自然界のルール、知性や道徳性のある人間界でそんなものがあっていいのかと考えてしまいますが、自由放任主義(レッセ・フェール)は経済上に限らず、さまざまな面で支持する政治家が多いことも事実です。英国保守党政権もコロナ対策に当たりこの考え方を採用したのでしょう。ですが、この放任主義によって首相のジョンソン氏や閣僚までが感染し、仕事を休むという事態になったのはいささかお粗末でしたが、、。

 トランプ米大統領も当初この放任主義の考え方に共鳴していたようで、マスクの奨励もせず、商業活動も止めずという感じでした。その後、感染者、死亡者が急増したので、今秋の大統領選を考慮したのか、いささか規制に動き出しました。ですが、彼本来の考え方でないので、すぐに経済活動再開の方向に目を向けています。コロナ死亡者8500人を超えたブラジルのボルソナロ大統領は今でもその放任路線を続けています。スウェーデンは左派政権ながら、政策として断固「集団免疫力」を信じているようです。その結果、コロナによる死者3000人ですから、国民は今後、この政策をどう評価するのでしょうか。

 日本の安倍政権も、当初は経済活動への影響を考えて規制を躊躇した嫌いがありましたが、2月末から、学校休校などの措置に出て断固防疫重視の方向に舵を切りました。社会ダーウィン主義は取らないという姿勢です。強制力を持たないという法律的な枠はありましたが、それでも国民は共生のために自己規制に徹し、感染者を減らしました。1億3000万人弱の人口で死亡者550人程度に収まっているのは、ある意味素晴らしいことでは。もっと世界に誇っていいのかも知れません。

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 上の写真は、横浜・桜木町駅周辺で見た植垣の花。