つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

韓国瑜高雄市長のリコールは当然の結果

 昨日行われた台湾南部の主要都市・高雄の韓国瑜市長に対するリコール投票で、罷免を求める賛成票が多数を占め、リコールが成立しました。結果は予想されたことですが、賛成約94万票、反対2万5000票と大差がついたことには驚きました。小生は今年1月の総統選の際、取材のため台北に行き、国民党本部を訪問したり、韓候補の演説を聴いたりしました。ボールド頭で背広嫌いという庶民的なイメージから、小生はそれほど嫌な印象を受けていなかったのですが、今回、中国寄りの姿勢が予想以上に彼にマイナス影響したようです。

 韓国瑜氏は一昨年暮れの統一地方首長選の時、北部新北市出身ながら、なぜか知りませんが、民進党の地盤である高雄の市長選に出馬。韓流ブームを起こし、民進党候補を破って当選しました。当時、民進党蔡英文総統は対中国で明確な方向性がなく、経済発展の政策も打ち出せなかったことから、人気低迷状態にあり、国民党に順風が吹いていました。国民党はどちらかというと、海外留学経験もある知的水準が高い人が候補になるケースが多いんですが、そういう意味では庶民派の韓候補は異色。それで、「国民党も変わったのでは」との見方がされ、民進党地盤でも韓氏が勝ったのです。

 当選後、韓氏は市長職に専念していればいいものを、市長選の圧勝に気を良くしたためか、また、持ち上げる人も多くいたため図に乗ったのか、2020年1月の総統選に色気を持ち始めたのです。それで半年もたたないうちに市長職を投げ出し、総統選に名乗りを上げたのです。結果、鴻海企業集団トップの郭台銘氏や前回総統選候補の朱立倫氏らを破って国民党候補者になりました。ところが昨年、習近平主席の「一国二制度」勧誘発言、香港での逃亡犯条例改正案を巡る騒動などがあり、台湾では、大陸に対し経済接近のメリットより、一気に政治的な不安感が増大、統一派の国民党にはアゲインストの風が吹き始めたのです。

 台湾総統は市長と違って「国」を代表する人物。ですから、やはりトップには、ナンバーワンの台湾大学を卒業し、その後に米国留学というキャリアが暗黙の了解事項になっているようで、現総統の蔡英文、前総統の馬英九もそうでした。ですから、私学出身で庶民派の韓氏に対しては「市長はともかく、総統にはどうか」という拒否感が底辺にあったようです。実を言うと、韓氏にも海外留学経験があるのです。でも、それは驚くことに大陸の北京大学留学。というキャリアを見れば、世間は彼を大陸派とみなしてもおかしくないと思います。

 台湾では、いったん別の選挙に出て落選しても、元の公的ポストに戻れるという日本と違ったルールがあり、韓氏は今年の総統選で敗れたあと再び高雄市長に舞い戻ってきました。市庁舎に戻った韓国瑜氏は改めて「高雄市のために頑張る」と言ったのですが、市長選当選半年で投げ出した彼を市民が許すはずがありません。今回のリコール投票の結果は、彼の無責任さに対し、市民の怒りが表明されたもの。常識的に考えれば、彼自身の短慮が災いした当然の結果と言えましょう。

 台湾では今、大陸との接近による経済的メリットを感じるより、政治的リスクを感じる人が多いという風潮は否めないところ。では、日本はどうか。新型コロナウイルスを発生させたこと、尖閣諸島に毎日公船を接近させ、緊張を高めていることなどの現状を見れば、われわれ庶民の中国に対する感情は良いものにならないはずです。その意味では、現在の対中国認識は日台共通、いや世界共通かも知れません。

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 上の写真は、桜木町駅近く野毛の飲み屋街にあるあるバーの入り口。野毛にはなぜかこういう植物を店頭に飾る店が多い。