つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

音威子府町の美術工芸学校は素晴らしい

 小生は千葉市の中心地の生まれなので、それほどド田舎に育ったわけではありませんが、小さかったころ、生まれたからには一度だけ東京に住んでみたいとちらっと思っていました。北京の勤務を終えて帰国したあと、会社から振り当てられたのが新宿区の社宅でした。正直言えば、嬉しかったです。子供のころからの夢でしたから。2年近く住みました。で、分かりました。やはり、東京は住むところではないなと。

 その理由ですが、確かに便利です。新宿のゴールデン街で深夜まで呑んで、歩いて(30-40分)帰れるんですから。でも、物価が高い(呑み代も含めて)。それに、人が多すぎるし、物騒。小生の友人で地方から出てきて初めて新宿に来た時の印象を語っていました。「きょう、道路に人が大勢出ているけど、何の祭りなのかな?」。正直、新宿、渋谷は千葉にもない異常な人混みです。小生は、まったく人がいないのも嫌だけど、混み過ぎは嫌だとしみじみ思いました。新型コロナウイルスの蔓延も、東京に人が集まり過ぎることが原因だと確信しています。

 それはともかく、NHKBS放送でやっている「グッサン!国道トラック旅」という番組のファンです。大河ドラマで小生の大好きな新選組永倉新八を演じてくれた山口智充が日本の国道をトラックに乗って各所を回り、地元の美味しい食べ物や変わった風景、場所を紹介してくれる番組です。それで、彼とゲストの女優田中美佐子が出演した時、北海道北部の国道40号線旭川稚内)を走って行き、寄ったところが比較的新設校の「北海道おといねっぷ美術工芸学校」でした。

 音威子府町がこの学校を造ったのは、人口減少を防ぐためとのことです。極寒の地ですから人が住みにくい。それで、日本全国から美術、工芸が大好きな高校生レベルの子供たちを集めて学ぶ場をつくったのです。3年間いてもらえれば、町は人口減が防げる。その代わり、子供たちには寮を提供し、学校の教育費を安くし、材料費をただで提供するという破格の待遇をしています。北海道の外は寒いけど、美術、工芸は室内でできるので、室内にいる限り温かい。全国どこからから来ても、たとえ南の方、沖縄、小笠原諸島から来ても問題ない。

 昔の職業訓練校のような学校を大自然の中に造るという発想をしたのは素晴らしいことであり、最初にアイデアを出した方はすごいなと思いました。こういう振興策って全国各所にあると思いますが、あまり喧伝されていませんね。ぜひもっと知らせてほしい。地方を豊かにする起爆剤になると思います。農産物でもいい、酒造りでもいい、陶磁器でもいい、モノづくりの教学の場、さらにはそれを売り物にした産業のベースが地方に造られれば最高。もうコロナ危険度の高い東京なんて行く気がしなくなるかも知れません。

 「おといねっぷ美術工芸学校」の何がすごいかというと、モノづくりにこだわって、全国から人を集めていること。全国各地にはモノづくりが好きな人がゴマンといます。そういう子供たちが共同生活して、作品制作に切磋琢磨するのは素晴らしいことで、彼らの生き生きとした姿に小生は感動しました。しかも、みんな良い作品を作るのです。ほとんどプロ級、そのままこの技術でメシが食えるというレベルの子もいます。人間、好きなことをやるのが一番いいし、しかもそれがメシの種になれば、もっといい。

 小生は大学で教えていた時に、授業の中での雑談で「技術、資格を持つことが大事。大学の卒業証書だけでは一生メシは食えないけど、技術を学び、資格を取れば、死ぬまでそれで食える」と話してきました。キャンパスの中では余計なセリフかも知れません。でも、東京に集まって画一化された大学の授業を受けて普通のサラリーマンになるという発想などもう捨てたらいいと思います。地方の然るべきところで、技術を磨き、そしてその地をベースにした産業、文化を起こしてほしいです。

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上の写真は、渋谷駅前のハチ公。コロナがない時期には、この周りは人だかりで、「ハチ公前で会いましょう」と言ってもなかなか巡り合えませんでした。