つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

東京の火葬場、中国人の経営で状況一変か

 最近、テレビのコマーシャルを見ていると、介護施設、老人ホームとか、高齢者でも加入できる傷害生命保険とか、旅行、ツアーとか、さらに毎食事の宅配から葬式・墓地の宣伝まで、明らかに老人をターゲットにしたものが多いように感じます。これは宣伝効果からすれば、当然のことでしょうね。日本で一番同年齢人口が多いのはいわゆる団塊の世代。小生もこの端くれにいて、若いときから激しい競争にさらされてきました。この団塊の世代の先頭グループ(1947年生まれ)はすでに後期高齢者の部類に入っていますが、やがてあと2年ほどで団塊のすべてが「後期」にのみこまれます。

 高齢者が一番関心を持つのはやはり永遠の”寝床”をどこに持つかという点でしょう。という意味で、団塊世代の喫緊の課題は墓場の確保です。小生は子供がいないので、数年前に先祖伝来の墓を整理してしまいました。今は”はかない”人生を送っています。では、どこに入るかということですが、内人の家の墓が京都東山にあるのでそこにするか、あるいは高校時代遭難しそうになった南アルプスで美しい高山植物に抱かれて眠るか、あるいは郷里の千葉市近くの東京湾に撒いてもらうか。

 正直、終末の”寝床”はまだ決めていません。決めたところで、死んだあとのことまで指図できないのですから、詮ないこと。まあ、どぶ川とは、公衆トイレの便器の中とかに投げ捨てられない限り、まあ良しとすべきなんでしょうね。人間は他の動物と同じようにやはり容器(骨壺)などに入らず、本来自然に還るべきです。できれば堅苦しい墓所などでなく、自然に抱かれるというのが望ましい形なのではないかと思います。法的に許される範囲で。

 それはさておき、ネットのニュースを見て驚きました。東京都内で町屋、落合、桐ケ谷など6つの斎場を運営している「東京博善」という会社が中国企業の傘下に入ったというのです。東京博善自体は明治時代からの老舗の日本企業なのですが、2020年に廣済堂という印刷会社に買収されました。さらに昨年、中国人実業家が経営するラオックスがその廣済堂ホールディングスの40%の株式を握り、間接的に経営権を執ったのです。

 ラオックスのやり手中国人社長が日本の高齢者増の現状を見て火葬場に目を付けたのはさすがだと思います。確かに、都内の火葬状況を見ると、荼毘に付されるまで長い間待たされることが多いようです。小生の友人の中でも、20日ほど待たされたケースを見ています。つまり、火葬場は絶対的な不足状態にある。であるなら、団塊世代の今後の必要性、需要と供給の関係から見て、火葬場は今、ビッグ・ビジネスチャンスがあるように思います。すでに火葬の料金も2万円近く引き上げられたそうです。

 そこで、ラオックスの中国人社長は今度さらにどう経営していくのかが気になります。都内に新たに火葬場を造るのか、あるいは現状の火葬場を改築して焼き場の数を増やすのか、それとも荼毘に優先順位を付けるように特急料金を設定するのか。斎場には「精進落とし」という会食もありますから、そこで出される料理を高級化し、高額料金を設定することもできます。待合室や精進落としの部屋を豪華にして差別化することも可能です。可能性は結構あるように思います。

 ですが、そういう差別化が日本人の情緒に合うかどうかは別問題。結婚式はお金の掛けようでいろいろな設定が可能ですから、ど派手な結婚式をやる人もいましょう。でも、こと葬儀に関しては、コロナ禍以後の昨今、「豪華な葬式ができます」という宣伝は世間受けしないでしょうね。むしろ、今、テレビコマーシャルで盛んに放映されているのは「小さなお葬式」です。

 葬儀参列、香典の出費などで他人に迷惑が掛けないように死者は粛々と去っていくというのが今、主流なのかも知れません。その方が日本人的なんでしょう。ですが、中国人実業家がそんな風情を理解できるのか。東京の斎場経営をビッグチャンスととらえ、小さなお葬式から豪華な葬儀へと一変させるかも。注目されるところです。

 上の写真は、沖縄・与那国島空港にあった水槽。沖縄の奇麗な海の底に眠るのもいいかも知れません。