つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

記者は国会内では黒子、自らの意思表明は異常

 前回の当ブログで、「テニス大会会場のボールキッズは黒子だ。黒子が主役に影響を与えてはならない」と書きました。ところが驚くことに、それと同じ光景が日本の国会の中でも見られました。6月初め、参院法務委員会で入管難民法改正案が採択される際、T新聞の女性記者が野党側に味方して「そうだ。そうだ」のヤジを飛ばしたというのです。この業界の端っこにいた小生としても、取材記者が自己主張して”主役”に躍り出てたことに驚くと同時に、これまた開いた口がふさがりませんでした。

 小生はかつて政治部でなく社会部所属の記者であって、本来国会に縁はあまりなかったのですが、それでも国会取材記者証を持っており、入館バッジを着けて国会内に入って取材したことはしばしばありました。毎週火曜日、金曜日に閣議が開かれるが、国会開会中、大臣たちは閣議後の記者会見を議事堂内の食堂で開くことが多かったのです。それで省庁担当していた小生もその会見カバーに行きました。実は、国会内には政治部記者の溜まりのほか社会部が集まる記者クラブもあったのです。

 ですから、社会部所属と言われているT新聞の女性記者が国会内にいることは不思議でないし、法務委員会も当然カバー対象です。そして記者も人間ですから、さまざまな考え方を持つのは自由、それに基づいて記事を書くのも自由でしょう。その所属新聞社が許す限り。でも、国会内では、記者はあくまで黒子です。記者本人がいかなる政治的な見解を持っていようが、それを国会内の公的な場で意思を示すのはどう考えたって異常。いや、基本的に公的な取材先で自らの意見などを開陳するのは許されない。

 でも、小生もさまざまな記者会見で経験したことですが、記者会見の質問で必ず自らの見解を開陳する人がいます。そして、さんざん自らの意見を述べたあと「これについて、貴殿はどう思うか」という聞き方をするのです。こういう記者は得てして大マスコミ所属で、いわゆる有名、名物記者ほどに多く見られる傾向。でも同席している他社記者からすると、「お前の意見など聞くたくない。質問事項だけ話せ」と言いたくなります。取材現場で、記者は黒子であることを忘れている御仁が多すぎるのです。

 T新聞女性記者はもともと菅義偉官房長官の定例記者会見で長々と質問して有名になった方。しかも、社会部の敏腕記者として数多くの特ダネをものにし、その名は知られています。ネット上でも独特の論を展開して活躍されている方ですから、いわゆる左翼系の人たちの間で多くのファンを持っているようで、将来野党の候補者として国会議員選挙に出馬する話もあるとか。それで彼女は「自分は有名人、単なる取材記者でなく、もう主役なんだ」と錯覚されたのではないか。まあ、自らの立場をわきまえない愚かな行為だと思いますが…。

 実は小生、かつてこの女性記者の講演を聞いたことがあります。警察、検察方面で数々の特ダネをものにした敏腕記者であることだけでも素晴らしいのですが、その上、夫や子供もおり、立派な家庭人でもあることを知り、敬意を表していました。ただ、講演を聞いて残念に思ったのは、彼女が自ら敏腕であることを自慢するのはいいとしても、それによって「他社からスカウトが来た」とか「複数の大新聞からわが社に来ないかと誘いが来た」などとスカウトされた”うぬぼれ話”まで披露したのには驚きました。こういう話はその社に関わる人ばかりでなく、多くの人にも不快感を与えます。

 それはともかく、女性記者の「そうだ。そうだ」ヤジは、国会内で鈴木宗男議員が取り上げ、問題視したほか、ユーチューブ上でも批判の動画が数多く出ました。取材記者を黒子から主役にしてしまった当該新聞社はどう出るのか。もし、これがウヤムヤにされたら、今後同様に取材記者が記者席から意見開陳してしまうケースが起きかねない。なんといっても、記者の中には一家言を持ち、それを言いたくてうずうずしている人がゴマンといるのですから、悪例になるかも知れません。

 上の写真は、いつも行く散歩コースの横浜・伊勢佐木町モール近くにある焼肉屋店頭の飾り。可愛らしいものばかりで楽しませてくれます。