つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

広い領土持つロシア、なぜもっと欲しがる

 先日、テレビの特集番組を見ていたら、ジョージアのある市民がウクライナへのロシア侵攻について、「ロシアはあんなに広い領土があるのに、なんで他国の領土を欲しがるのかな」としみじみ語っていました。正直、この言葉を聞くとだれでもうなずくかと思います。ジョージアとはかつてソ連の一部だったグルジアです。相撲取りの栃ノ心臥牙丸の故郷であり、日本人にもなじみ深い。自らの国もウクライナと同様かつてロシアの侵略を受けた経験があるので、市民の言葉に真実味があります。

 実は、ジョージアソ連崩壊後独立し、西側へ傾いたのですが、ロシアはそれを許しませんでした。軍隊が侵攻してジョージア政府の転覆を図り、西側寄りの流れを阻止、アブハジアとか北オセチアとか領土の一部を奪っています。ジョージア民衆は今でも西側へのシンパシーを感じていますが、ロシアとの関係が切れないので、政府はロシア寄りの姿勢を示しています。感情的には自由と民主の西側にシンパシーを感じながら、争いを避ける理性的な選択からロシアにすり寄っているという現実。我々から見ても何かもの哀しい感じがしてなりません。

 それで、冒頭に掲げたジョージア市民の率直な感想について。小生も、一昨年2月、ロシアがウクライナを全面的に制圧するために、3方面から国境を越えて進軍したのには正直驚きました。世界一の領土を持つ国がまだ領土が欲しがるのかと心底思いました。いや、この国は、この国の指導者は領土獲得が目的でなく、あるいは本当に戦争が好きなのかも知れません。ウクライナ侵攻から2年半たち、すでに50万人近くの死傷者を出しているのに、プーチンはいまだにウクライナ支配の野望を捨てない。いったいなぜそこまでこだわるのか、まったく分かりません。

 隣国なのだから、干戈に及ばなくてもウクライナ人はロシアを畏敬し、逆らうことなどなかったでしょう。欧州諸国も今回の戦争がなかれば、ウクライナNATOに加えようとは思わなかったでしょう。それなのにいったい何故?。ウクライナ侵攻を始めてロシアに良いことって何かあったのか。貴重な外貨獲得の元である石油・天然ガスのエネルギーは西側先進国に売れなくなり、その余剰分は、中国やインドに安く買いたたかれている。半導体などの西側の先端工業品も入らなくなったため、工業は事実停止状態にあります。

 プーチン自身は国際刑事裁判所から「戦争犯罪者」と認定されたので、もう西側先進国に二度と行けないでしょう。CSTO(旧ソ連圏の集団安全保障体制)の仲間を見ても、カザフスタンはロシアから離れ気味、アルメニアはCSTOから離脱しています。こうしたロシアから距離を取ろうとする中央アジア諸国に、中国がハイエナのように接近しています。ついでに言えば、ウクライナ侵略でロシア隣国のフィンランドスウェーデンNATO入りし、バルト3国やポーランドではますますロシア脅威論が高まり、防衛力を固めています。

 最終的に、ロシアが当のウクライナを屈服させ、領土を奪うことなどありえない。むしろウクライナはますます反抗姿勢を増すだけです。欧米からA-タクムス、ストームシャドーなどの長距離射程の地対地ミサイルを供与されて、むしろ2014年に奪われたクリミア半島やロシアの本領内を攻撃目標とし、ロシア市民も戦争に巻き込む勢いです。ロシアにとっては2014年時点より状況を悪くしている、良いことなど何もない。

 プーチンは今恐らく、メンツだけで戦争継続しているのでしょうね。いったん始めた戦争を意地でも止められない。でも、そのメンツに付き合わされて意味なく死んでいく何十万人の同胞が実に哀れです。愚かな指導者の本当に益ない、無駄な選択だと思います。でも、ロシア国民も形式的な選挙であるとはいえ、投票でプーチンを大統領を選んだのですから、自業自得かも知れません。

 日本人の立場で冷静に考えて気にすべきは、こういう理不尽で無茶苦茶な国家が世の中に存在し、しかも日本の隣国であるという点。本当は防衛力などに金をかけたくなのですが、対外拡張だけにしか熱意を持たない指導者とそれに支配される愚かな政府、国民が隣国として存在している限り、我々はしっかりした防衛力を構築していかなければなりません。

 上の写真は、2,3週間前の自宅付近で見られた紫陽花。今はもう暑さでしぼんでしまいましたが、好きな花の一つです。